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弁護士法23条の2「弁護士会からの照会」を自治体が拒絶できる場合はどんなときか。

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弁護士法23条の2「弁護士会からの照会」を自治体が拒絶できる場合はどんなときか。

弁護士法23条の2「弁護士会からの照会」を自治体が拒絶できる場合はどんなときか。

  • 1.法と裁判例

    (1)弁護士法23条の2と地方公務員法34条・地方公共団体個人情報保護条例等

    @弁護士法は弁護士業務の適正な遂行等のために以下のような法文で弁護士会を通じて照会できる。

    「弁護士法第二十三条の二 弁護士は、受任している事件について、所属弁護士会に対し、公務所又は公私の団体に照会して必要な事項の報告を求めることを申し出ることができる。申出があつた場合において、当該弁護士会は、その申出が適当でないと認めるときは、これを拒絶することができる。
    2 弁護士会は、前項の規定による申出に基き、公務所又は公私の団体に照会して必要な事項の報告を求めることができる。」

    当職の周囲の弁護士はこれは大変貴重な又は唯一の公的権限であると言っている。日弁連のデータでは公私の団体組織の約85%が応じているようである。

    A地方公務員法34条・個人情報保護法・地方公共団体の個人情報保護条例等の職務上知った個人のプライバシー情報等の守秘義務乃至は第三者提供禁止義務

    これは、地方公務員法や個人情報保護法、個人情報保護条例等で職務上知った個人のプライバシー情報等の守秘義務乃至は第三者提供禁止義務があって、弁護士照会はこれとぶつかってくる。犯罪捜査に基づくものや公判での証言や裁判所の提出命令もあるが、任意の時もあり、最終的には強制力がある場合のものには、応じるべきであることはあまり異論はないだろう。

    そこで、弁護士照会への拒絶について裁判所の判例には、応じなかったときは損害賠償を認めるもがかなりあって、最近次の判例が出てきて最高裁で決着がついた形になったのである。


    (2)平成28年10月18日 最高裁第三小法廷判決
    「…23条照会の制度は,弁護士が受任している事件を処理するために必要な事実の調査等をすることを容易にするために設けられたものである。そして,23条照会を受けた公務所又は公私の団体は,正当な理由がない限り,照会された事項について報告をすべきものと解されるのであり,23条照会をすることが上記の公務所又は公私の団体の利害に重大な影響を及ぼし得ることなどに鑑み,弁護士法23条の2は,上記制度の適正な運用を図るために,照会権限を弁護士会に付与し,個々の弁護士の申出が上記制度の趣旨に照らして適切であるか否かの判断を当該弁護士会に委ねているものである。そうすると,弁護士会が23条照会の権限を付与されているのは飽くまで制度の適正な運用を図るためにすぎないのであって,23条照会に対する報告を受けることについて弁護士会が法律上保護される利益を有するものとは解されない。
    したがって,23条照会に対する報告を拒絶する行為が,23条照会をした弁護士会の法律上保護される利益を侵害するものとして当該弁護士会に対する不法行為を構成することはないというべきである。…」
    (補足意見岡部判事)
    「…転居届に係る情報は,信書の秘密ないし通信の秘密には該当しないものの,郵便法8条2項にいう「郵便物に関して知り得た他人の秘密」に該当し,上告人はこれに関し守秘義務を負っている。この場合,23条照会に対する報告義務の趣旨からすれば上記報告義務に対して郵便法上の守秘義務が常に優先すると解すべき根拠はない。各照会事項について,照会を求める側の利益と秘密を守られる側の利益を比較衡量して報告拒絶が正当であるか否かを判断するべきである。23条照会に対する報告義務が公法上の義務であることからすれば,その義務違反と民法上の不法行為の成否とは必ずしも一致しないとはいえるが,正当な理由のない報告義務違反により不法行為上保護される利益が侵害されれば不法行為が成立することもあり得るところである。しかし,法廷意見の述べるとおり,弁護士会には法律上保護される利益が存在しないので,仮に正当な理由のない報告拒絶であっても弁護士会に対する不法行為は成立しない。」

    したがって、仮に正当な理由がないにもかかわらず照会の拒絶をしても不法行為は成立しないことになったと言っていいだろう。

    なお、補足意見はあくまでも補足意見であって、法解釈上の規範的な理由づけではないので「比較衡量」論は解釈上の先例的な価値はないだろう。そもそも弁護士会は、照会の必要性と相当性を弁護士から提出された文書などで判断しているわけで、照会された地方公共団体等にとっては、あくまでも重要なのは拒絶の正当な理由があるかどうかでなかろうか。それがあれば、もっとも重要なステークホルダーである住民等のプライバシー・情報主体との関係でも違法性を阻却すると考えていいのでなかろうか。

    蛇足であるが、法解釈における比較衡量論は具体的な妥当性を追及する論理としては優れているが、定性的なものを比較するのはどうやってするのか、この問題のような公法上の義務と私人の個人情報等との比較は可能なのであるか等の疑問があり、そもそも行政法のような法的安定性を重視して解釈すべき時に、少なくとも文理、そうでなくても論理解釈で一義性がないと著しく社会秩序の維持に害することがないであろうか。実質的には比較考量になるのであろうが、この場合は、明確に正当理由があるといったところに重点を置いて解釈していくべきとと考える。


    2.拒絶できる正当な理由があるときとは

    (1)形式的要件を欠く場合、照会先の職務の遂行に重大な支障を来たすとき(大阪地判昭和62年9 月20日 判例時報1289-94)

    (2)銀行への照会の場合(須藤典明「金融機関と弁護士会照会」銀行法務21 767号)
    @ 照会の趣旨や内容が不明な場合
    A 前提事実が誤っていると思われる場合
    B 報告を求められている情報が本人にとって特に保護すべきプライバシーなどに関する照会で、報告してよいか否か不明な場合
    C 主観的意見や評価を求められている場合
    D 報告するために膨大な労力と費用を要する場合

    (3)日弁連見解…報告を求める必要性と比較される他の利益
    @ 個人の名誉やプライバシ−
    A 公務員等の秘密保持義務
    B 捜査の密行性
    C 親書の秘密
    D 預金者の秘密保護
    E 円滑な職務遂行


    3.地方公共団体の実務はどうあるべきか

    以上の最高裁判例と拒絶の正当理由を考慮して実務を実施していくべきであろう。その時には、特に改正個人情報保護法のもとでは、個人のプライバシーに深くかかわるセンシティブ情報等である要配慮個人情報は正当拒絶の強い理由になろう。個人番号は論を待たない。もっとも、再三言っていることであるが、地方公共団体ではこれ未だに当該地方公共団体の条例に反映させて規定していないところが多いのは如何なものであろうか。

    個人情報保護法や個人情報保護条例では、第三者提供の例外として法令に基づくものとしているからと言って、やすやすと提供することは最高裁の犯罪情報提供の56年判例でよもやないと思われるが、あまりに地方公共団体の現場の職員は常勤も非常勤も含めて法や条例を知らず、しかも根本として、なぜ現代立憲国家で個人情報を保護する世界の潮流が始まったのかを分かっていないのである。そこに根本的な自治体実務の混乱と個人情報関連不祥事の原因があろう。


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