食のコンプライアンスに関するトピックス(BSE・タケノコ逮捕事件・生食えびす事件等)
- 食品不祥事は「衛生管理」に加えて「品質管理−表示管理」の時代に
⇒「衛生管理」…病原微生物や微生物が産生した毒素による食中毒は、原材料がもともと微生物に汚染されていたり、製造工程において新たに微生物が混入したために汚染されたり、汚染された微生物の繁殖などがその原因だったから。
⇒「品質管理−表示管理」…原材料の産地偽装、品質偽装、消費期限や賞味期限の偽装・誤記載、アレルギー原因物質などの無記載や、記載順序のミス(重量順に記載すべき項目での順序のミスなど)や不必要な内容の記載、消費期限切れの原材料使用や返品されてきた商品の再利用・部分的再利用などがあり、これらの情報は包装材料に記載されたり、印刷物として添付されている。
その原材料や期限などの決定は、製品開発・製品設計の問題であり、その設計のもとで包装材料に何を記載するのか等は全体としての品質管理の問題だから。
- 中国からの輸入食品は危険か:食品関係の中国当局組織はどうなっているのか。
◆中国本土で、食品の安全性評価や監督を担当しているのは日本の内閣府に相当する「国務院」にふくまれる日本の農林水産省に相当する【農業部】、厚生労働省に相当する【衛生部】、経済産業省に相当する【商務部】、国務院直属の【国家食品薬品監督管理局】、【国家質量監督検験検疫総局】(質検総局:AQSIQ)、【国家工商行政管理総局】
◆【国家質量監督検験検疫総局】(質検総局:AQSIQ)の重要性
輸出入食品・動植物の検査検疫(品質検査および管理、輸出入衛生検疫、輸出入動植物検疫など)を一元的に所管する組織で、輸出入が行われるそれぞれの地方に直属の検査検疫局、分支局、実験室などを設置している。
- BSE(牛海綿状脳症)の検査
◆牛海綿状脳症(BSE)対策については、厚生労働省では平成13年10月の対策開始から10年が経過したことから、最新の科学的知見に基づき、国内検査体制、輸入条件といった対策全般の再評価を実施する段階にあります。
そこで、平成23年12月に食品安全委員会に、食品健康影響評価依頼を行い、平成24年10月22日に、食品安全委員会から、食品健康影響評価が答申されています。
なお、日本では、平成15年(2003年)以降に出生した牛からは、BSE感染牛は確認されていません。
1)国内措置の見直し
これまで、特定部位として、と畜場で全月齢の牛の頭部・せき髄・回腸遠位部の除去、食肉処理施設等でせき柱を販売前に除去していたが、今後、30か月齢以下であれば、扁桃・回腸遠位部以外は、食用として使用できるようにする。
2)輸入措置の見直し
現行でも輸入が可能になっている米国及びカナダに加え、フランス及びオランダからの輸入を再開する。
◆BSEの検査法
BSEの原因と考えられているのは、異常プリオンタンパク質です。この異常プリオンタンパク質はタンパク質分解酵素に耐性を持っていますから、正常プリオンタンパク質はこの酵素で分解されます。この耐性を利用して、まず1番目にタンパク質分解酵素による処理を行った試料と行わない試料について、スクリーニング検査としてエライザ法を用いて検査を行い、
⇒陽性と判断された場合は、2番目にウェスタンブロット法による確認試験を行うとともに免疫組織化学検査、病理組織学的検査を行い詳しく判定していきます。
- 食品業界におけるコンプライアンスの徹底(■総務省行政評価局 平成24年11月8日)
「食品表示に関する行政評価・監視−監視業務の適正化を中心として−」
2)コンプライアンスの徹底の取組 ((農林水産省)勧告要旨) 「信頼性向上自主行動計画」に基づいて食品事業者団体が行う食品事業者に対するコンプライアンスの徹底の取組について、効果を検証するとともに、その徹底に関して、より一層の取組を促すこと。
○ 平成19年1月以降、食品表示に関する事件が相次いで発生
○ 農林水産省は「食品の信頼確保・向上対策推進本部」を設置し「食品業界の信頼性向上自主行動計画策定の手引き(5つの基本原則(注))」を作成
(注)5つの基本原則とは、各食品事業者に対して、
@)消費者基点の明確化、
A) コンプライアンス意識の確立、
B)適切な衛生管理・品質管理の基本、
C)適切 な衛生管理・品質管理の体制整備
D)情報収集・伝達・開示等の取組
これらの基本原則と、基本原則ごとの取組方針及び具体的な行動を示し、それを参考としなが ら実際の取組を進めることを働きかけたもの
○ 平成20年3月、農林水産省は、食品事業者団体に対し、それぞれ「信頼性向上自主行動計画」を策定して実際の行動に移すことを要請
(農林水産省の取組目標)
・平成20年度中に「信頼性向上自主行動計画」を180団体以上で策定
・平成22年度までに7割以上の中小食品事業者において「企業行動規範」を策定
《調査結果》
○ コンプライアンスの徹底に向けた取組を行っていないもの(27事業者中10事業者)
○ コンプライアンスの徹底に向けた取組は行っているが、「企業行動規範」を策定していないもの(17事業者中5事業者)
○ 上記の15事業者のうち、事業者団体に加盟している13事業者中には、@)農林水産省が食品事業者団体を通じたコンプライアンスの徹底に向け取組を行っていることを承知していないもの(2事業者)A)加盟団体から「モデル行動規範」の配布を受けていないもの(9事業者)
(農林水産省)
→食品業界のコンプライアンス徹底のため、183の食品事業者団体に対して、「「食品業界の信頼性向上自主行動計画」策定の手引き〜5つの基本原則〜」(平成20年3月、食品の信頼確保・向上対策推進本部決定)を通知し、信頼性向上自主行動計画の策定及びそれに基づく食品事業者に対するコンプライアンスの徹底の取組を働きかけたところ。
また、当該通知に関する取組について、その効果を検証するため上記183団体を対象に、「食品業界の信頼性向上のための取組状況調査」(調査期間:22年11月から12月)を実施した。
その結果、回答のあった食品事業者団体(平成23年2月末現在106団体が回答(回答率58%))においては、以下のとおり、研修会の開催や会報等による周知がされていたが、周知の取組が不十分な団体が見られたため、再度、183の食品事業者団体に対して、「食品業界におけるコンプライアンスの徹底について」(平成23年2月25日付け農林水産省総合食料局食品産業振興課)を発出し、更なる周知徹底を要請した。
@ 会員への「5つの基本原則」の周知のための取組状況等について
@)研修会等の開催 8割 A)会報等による周知徹底 7割 A 会員への「コンプライアンス体制の構築の必要性」の周知のための取組状況等について
@)研修会等の開催 6割 A)会報等による周知徹底 7割 平成23年度においては、より一層の食品事業者団体の取組を促すため、食品産業品質管理・信頼性向上支援事業(276,928千円の内数)により、食品企業のコンプライアンス体制の確立を図るための実践的な研修会を開催することとしており、今後とも、これらの取組を継続し、食品事業者団体及び食品事業者のコンプライアンスの徹底を図ることとする。
⇒ 平成23年度においては、より一層の食品事業者団体の取組を促すため、食品産業品質管理・信頼性向上支援事業(276,928千円の内数)により、実践的な研修会を全国各地で計71回開催し、食品企業のコンプライアンス体制の確立を図った。
これまでの取組により、コンプライアンス体制確立のための第一歩である企業行動規範の策定率は、中小食品企業において、平成19年度に50%だったものが23年度では77%に向上した。
今後の更なる取組を促進するため、「食品業界におけるコンプライアンスの徹底について」(平成24年5月11日付け農林水産省食料産業局企画課食品企業行動室)を発出し、更なるコンプライアンスの徹底を要請した。
- 「焼肉酒家えびす」の不祥事をまた繰り返すのか:生食用牛肉規格基準9割以上法令違反
◆厚生労働省の発表した「生食用食肉を取り扱う施設に対する監視結果」について(平成24年)
厚生労働省医薬食品局食品安全部発表
(1)結果について
この結果は、私にはかなりの驚きであった。
率直に言って、こんなに食を扱うものがルールを守らずにいて不祥事はまた発生しないのか。
そして、ここまで国や県の指導がゆるくていいのか。
「焼肉酒家えびす」事件では、何人の命が失われたのか。これでは死んだ者はうかばれませんよ。
事業者も行政もマスコミが追求しないと、また大きな食品事故が起きるまでナアナアでやるのか。
殊に、生食用食肉(牛肉)を取り扱っている施設は、445施設あり、規格基準に適合している施設は、たったの27施設(6.1%)であり、飲食店や食肉販売業が悪い。
消費者の口に近いところの事業者は、比較的零細な方々が多く、新基準ではコストがかかりすぎで、専用の設備や加熱処理の手間によって採算取れないということのようであろうか。
しかし、もう一度、「焼肉酒家えびす」事件で6歳の子供2人を含めた5人が亡くなったことを考えてほしい。
コンプライアンスの要請で、コストがこれまで以上にかかるといってもこれは時代の要請であろう。
地元の京都市でも不適合の事業者に中止命令を出している。
命の尊さを考えれ当たり前でなかろうか。
(2)国の都道府県等に対する要請
事業者の方への一層の周知活動が大事で、その気になるような講習会などの提供も求めている。
私も、その協力の講演を西日本のY県でやっている最中である。
そして、食は「表示」と切っても切れない関係にある。それを信頼して消費者は買っているのであるから。
適正な表示と今回の生肉の不衛生からは幼い子たちがやられやすことを肝に銘ずべきでなかろうか。
(3)牛の生食による悲劇を繰り返さないために
飲食店等で提供・販売する場合は、次に注意喚起を。
「一般的に食肉の生食は食中毒のリスクがある旨」
「子供、高齢者その他食中毒に対する抵抗力の弱い者は食肉の生食を控えるべき旨」
また、容器包装に入れて販売する場合は、これに加えて生食用である旨を明記し、解体や加工が行われた都道府県名とと畜場や加工施設の名称を表示する。
(4)法的観点から見た今回の改定
消費者庁による食品衛生法第19条第1項の規定に基づく表示の基準に関する内閣府令(平成23年内閣府令第45号)改正は、告示の形である。
法的には「告示」は、権利義務にかかわる「法規」の性質をもつものとそうでないもがあるが、当然ここでは前者である。
ここで決められた基準は、食品衛生法の内容をなすのであるから、違反すれば同法違反になる。
★参照条文
【食品衛生法】
第十八条 厚生労働大臣は、公衆衛生の見地から、薬事・食品衛生審議会の意見を聴いて、販売の用に供し、若しくは営業上使用する器具若しくは容器包装若しくはこれらの原材料につき規格を定め、又はこれらの製造方法につき基準を定めることができる。
○2 前項の規定により規格又は基準が定められたときは、その規格に合わない器具若しくは容器包装を販売し、販売の用に供するために製造し、若しくは輸入し、若しくは営業上使用し、その規格に合わない原材料を使用し、又はその基準に合わない方法により器具若しくは容器包装を製造してはならない。
第十九条 内閣総理大臣は、一般消費者に対する食品、添加物、器具又は容器包装に関する公衆衛生上必要な情報の正確な伝達の見地から、消費者委員会の意見を聴いて、販売の用に供する食品若しくは添加物又は前条第一項の規定により規格若しくは基準が定められた器具若しくは容器包装に関する表示につき、必要な基準を定めることができる。
○2 前項の規定により表示につき基準が定められた食品、添加物、器具又は容器包装は、その基準に合う表示がなければ、これを販売し、販売の用に供するために陳列し、又は営業上使用してはならない。
第七十二条 第十一条第二項(第六十二条第一項及び第二項において準用する場合を含む。)若しくは第三項、第十六条(第六十二条第一項及び第三項において準用する場合を含む。)、第十九条第二項(第六十二条第一項において準用する場合を含む。)、第二十条(第六十二条第一項において準用する場合を含む。)又は第五十二条第一項(第六十二条第一項において準用する場合を含む。)の規定に違反した者は、二年以下の懲役又は二百万円以下の罰金に処する。
○2 前項の罪を犯した者には、情状により懲役及び罰金を併科することができる。
⇒2年以下の懲役は重い。
悪質であれば、逮捕され、実刑になろう。過去に、食品衛生法違反で逮捕されたものがある。
※生食のコンプライアンスでの講演先の県庁近くの五重塔(瑠璃光寺)で。
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不正競争防止法とJAS法違反でJA京都中央に両罰規定を適用して書類送検
1.従業員の違反容疑
(1) 中国産タケノコ水煮で製造したつくだ煮を「国内産」などと表示…不正競争防止法違反
(2) 中国産タケノコの混ざった水煮の原材料を国産と表示…JAS法違反
2.法人の両罰規定
従業員が業務として違反行為を行っており、法人に監督責任
★JA京都中央は、一貫して課長のやったことで、国内産と認識していたとの説明またはノーコメントであるが、背信性が高まる一方である。
なぜ、謝罪の記者会見を開いたりできないのか。非常にそのコンプライアンス態勢には問題があると思う。
一度地元でもあるし、話を聞きに行くかしてみたいところである。
■食の安全国際規格「ISO22000」食品各社取得の動き活発
食品安全マネジメント初の国際規格であるISO22000 「食品安全マネジメントシステムーフードチェーンの組織に対する要求事項」 は、世界規模の安全な食品のサプライチェーンを保証するためにつくられた国際規格で、食品安全を目的とした初めてのマネジメント規格です。
ISO22000は、コーデックス委員会(FAO/WHO合同食品規格委員会)が作成した食品の衛生管理手法であるHACCP7原則をベースとしたマネジメントシステム規格です。
ISO22000の適用対象は、原材料の確保から最終消費者にわたるまでのフードチェーン全体に関与する組織になっています。
よって,飼料製造業者、第1次生産者、食品加工業者、輸送・保管業者、下請け業者、小売業者、食品サービス業者や機械メーカー・包装材料・洗浄剤・添加物及び原材料等の生産者まで幅広く対象になっています。
日本でも,BSE(牛海綿状脳症)や鳥インフルエンザも問題で消費者の食への安全の関心は高まっており,食品各社は消費者の信頼を得るために,ISO22000で自社の食の品質管理と安全性をアピールしたいのです。
日清製粉,UCC上島珈琲等はもうすでに取得済みで,今後の予定企業では,アサヒフードアンドヘルスケア,日清フーズ等が上がっています(日経2009年4月11日)。
今後は,生鮮品の原産地表示に加えて,加工食品についても,信頼性を高める事が大切になるでしょう。
ISO22000認証を取引条件に加える動きも活発になっていくことでしょう。