◆H17. 8.30 知財高裁 平成17(ネ)10012 著作権 民事訴訟事件
事案の概要
本件は,控訴人(一審原告)が,被控訴人(一審被告)成田ケーブルテレビ株式会社(以下「被控訴人成田ケーブルテレビ」という。)及び被控訴人(一審被告)銚子テレビ株式会社(以下「被控訴人銚子テレビ」という。)に対しては,控訴人との間で著作物利用許諾契約を締結しないまま,CS放送の同時再送信等に控訴人の管理著作物を使用していると主張して,別添楽曲リスト記載の音楽著作物を有線放送に使用することの差止めを請求するとともに,使用料相当の損害金又は不当利得金の支払を求め,被控訴人(一審被告)行田ケーブルテレビ株式会社(以下「被控訴人行田ケーブルテレビ」という。)に対しては,同被控訴人が控訴人との間に締結された著作物使用許諾契約に基づき,CS放送の同時再送信等に関し,管理著作物の使用料の支払を求めている事案である。
平成16年5月21日になされた原判決は,被控訴人らによる管理著作物の使用は,控訴人外4団体と被控訴人らとの間に締結された5団体契約による許諾の対象とされていたとして,控訴人の請求をいずれも棄却したので,控訴人はこれを不服として本件控訴を提起したものである。
判旨
上記認定事実によれば,5団体と準備委がテレビ放送の同時再送信についての権利処理方法及び使用料についての統一的な契約書式である5団体契約書式を定めた昭和48年8月当時,テレビジョン放送には地上波放送しか存在せず,衛星を使用した放送は近い将来に実現する予定はなく,使用料率は地上波局の免許取得に際して決められる放送サービスエリアを判断基準として区域内再送信と区域外再送信に分けて定められていたものであるから,5団体契約書式が合意された当時において,5団体と準備委がCS放送の同時再送信を5団体契約の対象としていたものと認めることはできない。そして,その後昭和59年に,5団体契約の許諾の対象外である有線放送については,控訴人と連盟との間で管理著作物の使用許諾契約書の統一書式について合意が成立し,覚書(甲24)が締結され,さらに,平成元年3月,我が国においてCS(通信衛星)のサービスが開始されて有線放送事業者は,それまでビデオテープ等のパッケージで購入していた番組をCS経由で配信を受けることができるようになったが,連盟が会員に送付した甲29通知文及び連盟が会員に配布した解説書である甲80ハンドブックには,CS委託放送は自主放送として計算することとされた。平成4年,一般家庭向けのCSアナログ放送が開始され,以降,5団体と連盟とは,有線放送に関する権利処理の在り方を新たに協議することとなったが,控訴人は,上記合意を前提に従来と同様に個別契約により処理する方向での協議を進め,その後も本件使用料規程改定の協議を継続して確認書(甲6,甲106)を取り交わしているのである。昭和48年当時5団体契約の対象とされていなかった控訴人の管理著作物については,昭和59年に控訴人と連盟との間で管理著作物の使用許諾契約書の統一書式(本件使用許諾契約)について合意が成立し,覚書(甲24)が締結されたものである(昭和63年3月31日に改訂され,現在の統一書式(甲4)及び覚書(甲5)となった。)。そして,当時,有線放送事業者は,第三者の制作する番組を番組制作会社からビデオテープ等のパッケージで購入していた(同統一書式の「有線テレビジョン放送の自主放送」(契約書前文)に該当する。)が,これが平成元年からCS経由で配信を受けることができるようになり,さらに,平成4年からは,CS放送されるようになったものである。
(4) 以上のとおり,5団体契約について関係団体間で合意が形成された経緯,当該合意形成から現在に至るまでの関係団体間の交渉の経過にかんがみれば,5団体契約第1条1項が定める使用許諾の範囲にCS放送の同時再送信が含まれているとは認めることはできず,CS放送の同時再送信は,5団体契約の対象外とされていたものと認められる。
(5) また,被控訴人らは,いずれもFM東京,NHKFMなどのラジオ放送の同時再送信を行い,これらのFMラジオ放送において,控訴人の管理著作物が多数使用されていることは上記認定のとおりであるところ,これが5団体契約による使用許諾の対象となっていたものと認めることもできない。
(6) 以上検討したこところによれば,5団体契約の存在を理由として,控訴人の差止請求及び損害賠償・不当利得返還請求ないし使用料請求が許されないということはできない。
原判決は,CS放送の同時再送信は5団体契約の対象になっていたと認定するが,要は被控訴人らとの間で個別に締結された5団体契約の契約内容に関する事実認定の問題であり,当裁判所は,上記のとおり,CS放送の同時再送信等は5団体契約の対象外と認定するものである。
そこで,進んで,他の争点について検討を加える。
4 被控訴人らの抗弁(2)(映画の著作物であることによる著作権行使の制限)について
(1) 被控訴人らは,テレビ番組はすべて「映画の著作物」に該当するとして,テレビ番組の構成要素である音楽の著作物の著作権者が公衆送信禁止権や使用料等請求権を行使することはできない旨主張する。
しかし,著作権法16条本文は,「映画の著作物の著作者は,その映画の著作物において翻案され,又は複製された小説,脚本,音楽その他の著作物の著作者を除き,制作,監督,演出,撮影,美術等を担当してその映画の著作物の全体的形成に創作的に寄与した者とする」と規定しているところ,同規定の趣旨は,映画の著作物において翻案され,又は複製された小説,脚本,音楽その他の著作物の著作者(いわゆるクラシカル・オーサー)については,映画の著作物の著作者とは別個に映画の著作物について権利行使することができることをいうものと解すべきである。したがって,被控訴人らが同時再送信するテレビ番組の中に映画の著作物に該当するものがあったとしても,当該映画の著作物において翻案され,又は複製された著作物の著作者は,クラシカル・オーサーとして,テレビ番組の著作者とは別に,著作権者としての権利行使を行うことができるというべきであるから,被控訴人らの上記主張は失当というほかない。
(2) 被控訴人らは,最高裁キャンディ事件判決の趣旨に照らすならば,映画の著作物たるテレビ番組について,控訴人は,他の権利者との合意によらなければ著作権を行使することができず,そもそも被控訴人らに対して著作権の主張をなし得る立場にないから,被控訴人らは,放送番組を有線放送するに対して,控訴人から許諾を得る必要はないと主張する。
しかし,上記判決は,二次的著作物の著作者による当該二次的著作物の複製行為に関し,原著作物の著作者は,当該二次的著作物を合意によることなく利用することの差止めを求めることができる旨を明らかにしたものであり,二次的著作物の原著作物の著作者が単独で第三者に許諾権限を行使することができない旨をいうものではない。したがって,被控訴人らの上記主張も,失当というほかない。
以上によると,控訴人の被控訴人らに対する本訴請求は,
(1) 被控訴人成田ケーブルテレビに対しては,
ア 著作権に基づく差止請求と,
イ 別表2−@記載の各年度の使用料相当額合計624万1857円(平成3年分から平成12年分については,平成10年9月30日までは不当利得金として,平成10年10月1日から平成13年3月31日までは損害賠償金として。平成13年分については,平成13年4月1日から平成14年3月21日までは不当利得金として,平成14年3月22日から平成14年3月31日までは損害賠償金として。)と,
ウ 別表2−@記載の既経過遅延損害金85万5136円(ただし,平成3年分から平成12年分の平成10年9月30日までの分と,平成13年分の平成14年3月22日までの分は法定利息として。その余は遅延損害金として。)と,
エ 弁護士費用40万円と,
オ 前記イの使用料相当額合計624万1857円と弁護士費用40万円の総合計664万1857円に対する平成13年10月1日から支払済みまで年5分の割合による遅延損害金(ただし,使用料相当額のうち損害賠償債権の時効消滅部分については法定利息として)と
を,各求める部分(なお,前記イ・ウ・エの合計額は749万6993円である。)は理由があるが,その余は理由がなく,
(2) 被控訴人銚子テレビに対しては,
ア 著作権に基づく差止請求と,
イ 別表2−A記載の使用料相当額合計72万0504円(内訳は前記(1)イのとおり)と,
ウ 別表2−A記載の既経過遅延損害金9万1383円(ただし,法定利息との関係は前記(1)ウのとおり)と,
エ 弁護士費用5万円と,
オ 前記イの使用料相当額合計72万0504円と弁護士費用5万円の総合計77万0504円に対する平成13年10月1日から支払済みまで年5分の割合による遅延損害金(ただし,法定利息との関係は前記(1)オのとおり)と
を,各求める部分(なお,前記イ・ウ・エの合計額は86万1887円である。)は理由があるが,その余は理由がなく,
(3) 被控訴人行田ケーブルテレビに対しては,平成8年度ないし平成13年度の使用料合計292万9601円及びうち平成8年度ないし平成12年度の使用料合計226万9601円に対する訴状送達の日の翌日である平成13年10月12日から,平成13年度分の使用料65万8208円に対する弁済期の翌日である平成14年4月1日から,各支払済みまで商事法定利率年6分の割合による遅延損害金の支払を求める全部について理由がある。
11 結論
よって,これと異なる原判決を変更し,控訴人の本訴請求を,前記10の理由がある限度で認容し,その余は棄却することとして,主文のとおり判決する。