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会社法の成立で大きな影響を受けた企業法務

【会社法の成立で大きな影響を受けた企業法務】

 新法「会社法」が平成17年(2005年)6月29日に国会で成立し、平成18年(2006年)5月1日より施行されました(三角合併等に関する部分は2007年実施)。企業法務はこれまでにない大きな影響を受けています。
 起業家のための最適な各種会社設立(有限会社 株式会社 確認会社 LLP LLC)が可能になりました。
 新会社法を知るためには、以下の11のポイントが重要です。

【会社法の11のポイント】…企業法務に対する影響の大きいのは以下の諸点です。


1.有限会社の廃止


 (1)新会社法が施行されると、もう新たに有限会社をつくることは不可能である。しかし,これまでの「有限会社」が強制的に廃止させられるわけではない。存続は可能であるし,株式会社に変更も可能である。新会社法の施行前につくられた有限会社の場合、いろいろな法律上の規定は株式会社の規定がつかわれるものの、「有限会社」という商号をそのまま使用して、業務を続けることができる。また、有限会社は役員の任期がないが、株式会社は役員の任期があり,このような有限会社特有の制度も存続は可能である(整備法−会社法の施行に伴う関係法律の整備等に関する法律2条以下参照)。

 いずれにしろ、有限会社は今後増えないので、古い会社とイメージされる可能性がある。逆に、有限会社ということは古くからある信頼できる会社とイメージされる時代もくる可能性がないわけではない。

 これまで,有限会社法が商法の会社編と並んで会社に関する規制を行ってきたが,時代の要請でどんどん商法特例法などの追加・修正する法律ができて,会社法の規制の実体がわかりにくくなってきていた。起業するにも,どの法律を根拠に作ればいいのかがわかりにくくなっていたのである。しかも,カタカナで法文が書かれているので,一読即解とはいかない。
 日本社会の活性化のために,起業をしやすくするとともに,企業同士の連携についてのM&Aにも対応できる会社法規制は時代の要請であった。
 これから起業しようとする人は,「会社法」だけをとりあえずみればよい。その中で,株式会社や新しくできた合同会社を起業の会社形態として選択すればいいのである。

 (2)新会社法の施行前につくられた有限会社には、会社名に有限会社をつけるか、株式会社をつけるかという二つの選択肢がある。
 新会社法では、最低資本金という制度そのものがなくなり、資本金1円の株式会社が認められるから,有限会社は、いまの資本金を増やすことなく、そのままで、株式会社に移行できる。
株式会社に移行するには、商号の変更という手続きをとる。商号の変更は、株式会社の設立の登記をして、はじめて有効になるので、有限会社について解散の登記をして、株式会社について設立の登記をする。
 株式会社に移行すると、有限会社特有の制度は効力がなくなり、役員の任期は制限がでてくる。
 有限会社のままでいれば、変更の登記手続きや、看板や名刺、登録名の変更などがいらないので、名前を変えるというわずらわしさがない。新会社法では有限会社に関する規定はなく、有限会社という商号をつかい続ける会社にも、株式会社の規定が適用される。
 株式会社の規定といっても、新会社法では、最低資本金の制度がなくなり、株式会社も株式譲渡制限会社であれば、1人取締役の会社など、有限会社型の会社の形をとることが認められるので、有限会社と、株式会社の制度上の違いは、ほとんどない。
すでにある有限会社は、有限会社のままでいる場合はもちろんのこと、株式会社に移行しても、有限会社型の会社の形をとれば、資本金を増やしたり、取締役の数を増やしたり、監査役を選出したりする必要はない。

結局,有限会社と株式会社の違いといえば、有限会社は役員の任期がないことや決算公告の義務がないことなどがあげられる。これらは有限会社に特有の制度であって、新会社法における株式会社には認められない。
 もっとも、新会社法では、役員の任期は最長10年まで延ばすことができるようになる。
 
 確かに「株式会社」名の人気が高いので、株式会社への登記の申請手続きや、名前の変更による印刷物などの修正を考えても、株式会社に移行する有限会社が多いと予想されるが、有限会社は、新会社法の施行後はつくれなくなるので、ある程度の会社の歴史が認められることは間違いないからその信用と希少性はあろう。

2.資本金制限撤廃−1円会社が継続して可能


 (1)これまでいわゆる「確認会社」を除いて有限会社は最低300万円、株式会社は最低1000万円を資本金として設立時に用意しなければならなかった。しかし、新会社法では株式会社をつくる際に、資本金1円でも足りることになった。資本金の額は、法律で決められた金額とするのではなく、自分で決めた金額とすることができる。企業への信頼は会計参与を新設し,決算書への信頼性を高めたりすることによって対応しようとするのである(ただし,株式会社は資金がなくてもつくれるが、会社の運営に資金がいる事をお忘れなく)。

 (2)2003年から最低資本金規制特例制度が登場し、「新事業創出促進法」に基づき「1円の資本金」でも会社の創設が可能であった(法律改正に伴って、平成17年4月13日(水)以降は、「中小企業の新たな事業活動の促進に関する法律」に基づく制度)。
しかし,これには特別な手続きが必要であったが,もう不要である。

 なお,新会社法施行まえにつくった一円会社は、設立のときに作成した会社の定款に「資本金を増やせなかったら5年後に組織変更か、解散すること」を定め、これを登記するので、登記事項証明書(登記簿謄本)にそれが記載されている。
 そこで,資本金を増やすことなく5年後の解敢等を避けるためには、新会社法が施行されたら、株主総会で、この解散事由を定款から削除するという決議をし、登記簿からも削除する登記申請が必要である。
 この手続きによって、現状の資本金のままで株式会社をずっと続けることができることになる。

(3)これまでの商法による資本金規制を振り返ってみると,最低資本金の額は株式会社35万円、有限会社10万円の時代があり,会社の設立の容易さから実体のないペーパー企業が増加し、会社への信用が失われる状況となった。
そこで、1990年の商法改正で、株式会社1000万円、有限会社300万円となったのである。ところが,経済界や産業界から、創業促進・産業活性化の観点から規制緩和が求められ,経済産業省によって,2003年より、最低資本金規制の特例として、資本金が1円でも起業が可能となった(1円会社)。
そして,今回の新会社法では,最低資本金の規制が一般に撤廃されたのである。

(4)資本とは、会社財産を確保するための基準となる一定の計算上の額で,会社にはブランドに対する信用や社長等の人格に対する信用などいろんな信用があるが、お金に対する信用が資本金である。
 資本金が1000万円あるということは、少なくともそれだけのMONEYを用意できて会社を設立したという事がいえる。従来はこのような決まりをつくることによって、会社同士が信用しあえる環境をつくろうとした。資本金は法人登記と貸借対照表に記載されて公開されるのである(登記では資本金のことを「資本の額」という)。
 
 これからは、1円でも株式会社がつくれるようになることから、2006年の施行日以降は多くの起業・創業が期待されるが,これまでと違い「株式会社」というだけで信用されるということはなくなるであろう。
 取引の実際では,会社の資本金がいくらあるのかを尋ねられたり、計算書類の提出が入札時などと同じようにもとめられ事が考えられる。
 これからは中小企業にも、信用のために積極的に定款や計算書類など情報開示をしなければならない。

 なお,資本金は会社で設立時からずっと実際に金庫や銀行預金の形で常時存在する金銭のことではない。設立後は会社活動のためにすぐにつかってもよいお金で、帳簿上でのみ存在する数字である。したがって,今回、最低資本金制度が撤廃されても、既存の会社にはほとんど影響がないであろう。
 確かに減資はし易くなるが、減資をしたからといって、直ちに手元のお金が増減するわけでもないからである。

3.1人取締役の株式会社−株式会社の機関設計のルール


(1)有限会社はこれまでも取締役が1人でもよかったが、株式会社は最低3人の取締役が必要で、さらに取締役全員による「取締役会」を開かなければならなかった。

 ところが、株式会社でも「取締役l人」で可能になった。取締役一人であるから、「取締役会」も強制設置でなくなる(公開会社を除く)。人数あわせの役員選出は不要になるので,不必要な役員報酬の支給を見直して、会社の経費のスリム化を図れるし,個人事業を会社組織にしたような会社や、グループ企業の子会社はこの形態をとるといい場合もある。

 新会社法では会社の機関を一定のルールに従って自由に決められる(定款で分かる),その場合の最低限のルールとして下記のものがある。
 @すべての会社は、株主総会のほか、取締役を置かなければならない。
 A株式譲渡制限会社は、取締役会を置くか否かを選択できる。
 B取締役会を置かない会社は、取締役は1人以上でよく、監査役を置く必要もない。
 C取締役会を置く会社は、監査役か会計参与等を置かなければならない。
 
 また、取締役会を置かない会社は、いままで取締役会で決めていたことは株主総会で決めるようになるなど、株主の権限が強くなるので,経営者自身が株主である場合でないと運営がうまくいかなくなる可能性がある事には注意する必要がある。
 
 なお、役員に対する賞与は、税務上の経費と認められず、役員からはずしても、配偶者などは「みなし役員」という規定によって、役員扱いにされる場合があるので,税務上は別個の考慮が必要である。
 
(2)新会社法ではこの株主総会の招集手続きが簡単になり,例えば電話で明日の早朝,株主総会を実施すると決めることさえできる。この改正によって必要に応じて株主総会が開けるようになリ、迅速な経営判断が可能となる。
また,新会社法では、1株の株主でも株主総会における議題の提案ができ,株主の意見を会社の経営に反映させやすくなる。
 
 現行法では、定款で特別な場所を定めていなければ、会社の本店のある場所か、これに隣接した場所でしか株主総会を開くことができない。東京都新宿区に本店がある会社は、新宿区及び隣接地である渋谷区や中野区,千代田区などで株主総会を開くことはできても、練馬区や他の都道府県で開くことはできない。新会社法ではこの制限が撤廃され,どこでも株主捻会が開けるようになる。

(3)株主の権利は大きく2つに分けることができ,自益権(配当をもらう権利など)と共益権(議決権など)がその代表例である。自益権は単独株主権(1株持っていれば行使できる権利)だが、共益権には単独株主権と少数株主権(一定数または一定割合かつ一定期間株式を持っている株主だけが行使できる権利)がある。少数株主権となっているのは株主による権利の濫用を防ぐためである。
 しかし,取締役会のない株式譲渡制限会社については、株主の権限を強化するために、その規制を緩和する。少数株主権とされているものの全部について、定款に定めれば要件の緩和や単独株主権とすることができる。また、一部の少数株主権は6カ月間繊続して株式を持っていないと権利を行使できないものがあったが,新会社法ではこの保有期間の制限もなくなる。

(4)取締役会の決議は、取締役の過半数が出席し(定足数)、出席取締役の過半数をもって行うのが原則で新旧会社法を問わず,取締役会を設けた会社の場合、取締役は最低3人必要である。これは取締役会で多数決がとれる最少人数だからである。
株主総会は議決権数により多数決が行われるが、取締役会では頭数に応じた多数決がとられる。取締役会は、取締役の集まりで、会社がどのような業務を行うのかを決めるとともに、取締役の中から代表取締役を選び(解職し)、外部との取引を任せ、なおかつ代表取締役を監督する会議体である。   
 また、取締役同士も適正な仕事をしているかどうかをお互いに監督する法的義務がある。
取締役会で決められた内容をもとに、実際に業務の指揮をとるのは代表取締役だが、取締役会は会議体である様々な決議事項を、経営の専門家である各取締役が自らの意見を述べ、十分に議論することが期待される場である。
 よって現行法では、取締役会が開かれないと議論の揚が失われ、各取締役が意見を述べる機会を奪うことになるため、書面またはメールによる持ち回り決議を認められていない(代理出席も不可)。
 しかし、取締役が遠方や海外にいる場合、取締役会に出席することができない、という問題が発生することがあり、取締役会に出席するためだけに、出向くのもたいへんである。
 新会社法では、取締役会の決議の目的事項に各取締役が同意し、かつ監査役が特に意見を述べることがないときは、書面またはメールによる持ち回り決議をすることができる旨を定款に定めることができ,電話会議やテレビ会議も認められる。
しかし、実際に取締役会を開く必要があるので,取締役会を開けない場合には、新会社法では取締役会を設けないという機関設計も可能である。

(5)現行法では,取締役は非常に重い責任がある。取締役は会社に損害を負わせたのであれば、自分に過失がなくても会社に対する責任を負わなければならない(金銭賠償による責任)。
 また、本来責任を負うべきはあやまちを犯した取締役だけのはずだが、それらのあやまちが取締役会の決議に基づいてなされた場合、その決議に賛成,明確に反対しなかった取締役もそのあやまちを犯したものとみなされる。
これらの責任を負わないためには、参加した取締役会議事録に、「決議に反対した」という事実をとどめておく必要がある。
 新会社法では、利益相反取引で自己取引ではない項目はすべて過失責任になっている。ただし過失責任とはいっても、取締役は自分に過失がないということを立証しなければその責任を逃れることはできない。また、現行法のなにもしていないのに決議に賛成したというだけで多額の損害賠償責任を負わされる責任はなくなる(この点は経済界の強い要請があった)。
 新会社法においては、取締役の会社に村する任務懈怠責任について、ほかの責任と同様に一部免除制度が適用される。一部免除の限度額は、原則として報酬等の6年分で,代表取締役以外の取締役については報酬等の4年分,業務執行をしない社外取締役については報酬等の2年分となる。
 また、社外取締役と事前の契約に基づき責任限度額をあらかじめ定める方法も認められる。

4.株式譲渡制限会社


 新会社法では、すべての種類の株式にこの譲渡制限規定がある会社のことを「株式譲渡制限会社」としている。
 株式は自由に売り買いできるのが原則であるが,ほとんどの株式会社は、定款に「当会社の株式を譲渡するには、取締役会の承認を得なければならない」という規定を設けている。会社法人の登記事項なので、会社の登記事項証明書(登記簿謄本)を見れば、わかる。

 譲渡制限規定は株主対策であり,株主が会社にとって好ましくない人に株式を売ることを認めず、必ず会社の承認を求めているので、株主が勝手に株式を売ることを防止できるのである。
 この場合に株式を売る相手を会社が認めなければ、株式を売りたい株主は、その代わりに買ってくれる人を会社に指定してもらうのである。
 株式を上場している会社では、株式譲渡制限があると株式流通の阻害となるので、この規定を設けてはいけないこととなっている。
株式の譲渡制限がある場合は、株式の売買のほかに贈与(事業承継等も含む)のときには、取締役会 (取締役会を置かない会社は株主総会)を開き、売買・贈与について承認し、確認のために議事録を残すことになる。
 この非公開型の会社では,会社法上は次の対応規定がある。
@取締役会を置かなくてよい
A原則、取締役は2年、監査役は4年とされている任期を最長10年まで延ばせる
B監査役を置く場合は、監査役の権限を会計監査に限定できる
C定款に株券発行の定めがあっても、株主からの請求がない限りは株券を発行しなくてよい
 これらのメリットの大きい制度を受けるには、すべての種類の株式に譲渡制限規定を設けた「株式譲渡制限会社」であり、定款でこれらの制度を採用を明記することが必要である。

5.定款(変更)の重要性と会社の信用


 新会社法で新しく認められる制度を採用するには、定款でそのことを定める必要があり,新会社法における改正の恩恵を十分に受けるためにも、「定款」の役割はこれまで以上に重要性が高まった。

(1) 株式会社をつくる際には、会社内のルールを決めた「定款」が必要で,設立時に作成する定款は、公証役場で認証を受ける(収入印紙4万円,公証役場の手数料5万円と謄本料)。この最初の定款は「原始定款」と呼ばれる。
 設立後、株主総会で定款の内容を変更しても、再度、定款の認証を受ける必要はなく定款の認証は、最初の1回限りである。
 この「定款」は、法律の改正や会社の運営方針によって変更されていき,例えば商号の変更、事業目的や会社の所在地の変更などは定款の変更をともなうのである。

(2)定款を変更するには、まず、株主総会で話し合い、通常は、株主総会の特別決議による承認が必要となる。その後、会社の登記事項証明書(登記簿謄本)への記載が必要な事項は、登記申請の手続きをとる。
登記申請時の添付資料として、定款を変更したことを決めた株主総会の議事録が必要である。しかし、株主総会の議事録をつくる会社でも、定款は直さずに設立したときのままになっている会社がよくあるが今後はそうはいかないであろう。
なぜならば,新会社法において,同じ株式会社でも多様な株式設定,機関設定のもとでは「定款」こそが計算書類と並んで会社の実態を知る手がかりになり,変更がおればその都度、定款を修正し、保存すべきである。
 なお,設立時には一般に販売されている汎用書式を使って定款を作成した会社も、その後の変更に備えて、デジタルデ―タをつくつて、保存しておくことを推奨する。
 また,変更後の定款は、公証役場での認証がいらないので、代表取締役が、「原本に相違ない」旨を記載し、記名押印などをすることによって、本物と違わないことを証明することになる。
 念のために,特に定款変更で要注意のものを挙げると,「取締役会を置くかどうか」、「監査役を置くかどうか」、「役員の任期を何年にするか」,「有限会社を株式会社に移行する」,「1円会社の解散の要件の削除」などがある。

6.会計参与…機関の新設


(1)新しい会社の機関の一つとして、「会計参与」が取締役などに加えてできた。
「会計参与」には「税理士・公認会計士」等の会計の専門家のみがなれる資格があり,行政書士などは会計業務をやっいてもなれない。
 会計参与を設置している会社の決算書は、他社の決算書とは違って会計の専門家が作成に関与しているという点で、信頼性が高いという評価につながる。
 会計参与制度は,景気の悪化や土地担保至上主義の崩壊などで、企業の信用が土地から決算書などの計算書類に移動している中で新設された。金融機関の融資制度も、最近では財務データのみの分析、評価をして貸し出すといった制度がつくられつつあるようである。
しかし、決算書は経営者によって粉飾されやすいデータでもあるため、その信頼性が問題である。そこで、上場企業や大会社については、第三者の公認会計士や監査法人が決算書のチェックをして一定の信頼を得ている。そこで、中小企業にも決算書のチェック機関が必要ではないかとなるが,中小企業にとって、会計のチェックができる専門性の高い人員を雇う余力はないであろう。また,監査役が置かれていても、チェック機関として機能している会社はごくわずかである。そこで,過大な負担がなく決算書などの信頼性を高めるための制度として、税理士や公辞会計士を会社の機関に組み入れ、決算書などの会社の計算書類を取締役と共同で作成させる制度をつくることにしたのである。

(2)会計参与の設置は会社が自由に選択でき、会社の定款でその設置を定めることができ,会計参与の氏名・名称は、登記事項として会社の登記簿に記載される。
また、取締役会を設置した会社では、監査役の設置が必要であるが、中小企業では監査役の代わりに会計参与を設置することも認められている。この点も誤解が多いので注意する必要がある。

 中小企業において,会計参与設置の例をあげると
@株主総会+取締役+会計参与
A株主総会+取締役会+会計参与
B株主総会+取締役+監査役+会計参与
C株主総会+取締役会+監査役+会計参与
が主なものである。

7.会社の設立方法の変更点と会社形態(株式・合同・合資・合名・LLP)の選択


(1)現行法では、「同じ市町村(区)内に、事業目的が同じで、かつ同じ名前(混同しやすいものも含む)の会社がある場合(類似商号)」には、あとから新しく会社をつくることはできない。
 法務局での登記手続が無事に終了した時点で、初めて会社が成立したことになる(効力発生要件)。よって,定款をつくる段階で「類似商号の調査」 を行う必要がある。
 しかし、新会社法によって、この「類似商号の調査」を行う必要がなくなる。
つまり、「同じ市町村(区)内で、同じ事業目的、かつ同じ名前の会社をつくれるようになる」。
 ただし、有名企業と同じ名称になる場合には、いままでと同様に商標権などの事前調査が必要になるし,不正競争防止法の規制があるなど知的財産権の法規制に注意する必要がある。

(2)これまでは会社をつくる際には「類似商号の調査」と併せて「目的相談」が必要で,会社を設立するときには、あらかじめその事業目的を明確にして定款に記載し、登記しなければならない。
 しかし、この「目的」が適格性に欠けるとされ登記ができず、定款認証をやり直すことになって、公証役場に何度も足を運ぶはめになることがある。
 この目的相談のポイントは,登記の際にはより具体的に書かれているか否かである。
たとえば、具体的な業種を複数掲げ、その末尾に「前各号に付帯する一切の事業」と掲載することが多い。
     例えば
      1.ブログによるホームページの企画、立案、制作,保守
      2.インターネットを利用したマーケティング調査
      3.前各号に付帯する一切の事業
 
 では、とにかく具体的に記載すれば、登記は通るかというと、A法務局では通ったけれど、B法務局では通らなかったということが現実によくある。
 必ず事前に会社の本店を置こうとしている場所を管轄する法務局に確認をとる事が大切である。
 要するに事前に法務局に相談し確認をとっておく「目的相談」でオーケーがでないと,同じ商号で、同じ営業を目的としており、同じ市町村(区)内では登記ができないことになる。同じ営業か否かについては、登記事項である「会社の目的」で判断するからである。
 登記実務においては「会社の目的」にかかる語句の使用が厳格で、審査に時間と手間がかかる。
 しかし、新会社法により類似商号規制が撤廃される。同じ営業かそうでないかの審査も必要なくなり、登記実務においても、「会社の目的」について包括的な記載が認められることとなる。
 実務上、商号や目的の調査には少なくとも半日から1日程度の時間がかかるし、また、専門家に頼めば当然コストがかかる。新会社法ではこの手間とコストがなくなるので、この点で設立は大幅に容易になる。
 
(3)会社をつくるときには、発起人は銀行などの金融機関を払込金融機関として、株式の発行価額の全額をいったん払い込まなければならない。
 現在の制度では金融機関を介するため、金融機関がなかなか払込事務を引き受けてくれないことや払込金保管証明をもらうのに手数がかかるし,設立登記が完了するまで払込金を引き出せないなどの問題があった。
 しかし、新会社法では払込金保管証明の代わりに「残高証明」があればよくなるのでこの点でも設立は簡易になる。

(4)これまでの商法では、株式会社・有限会社・合資会社・合名会社の4種類の会社形態が用意されていた。これが新会社法では、株式会社・合同会社・合資会社・合名会社の4種類に変更される。
この4つの中で、ほかの種類の会社に変更することもできる。
「株式会社」は、従来の株式会社と有限会社をあわせ持った性質になつている。

 新会社法での『合名会社』は、1人以上の社員によって構成される小規模な組織を想定した会社である。社員は、株式会社における株主であり取締役でもある存在で,合名会社の社員は「無限責任(会社で生じた債務などの責任を際限なく負う)」であるため、会社の信用力と社員の信用力がほぼ一致している。
 これに対して、株式会社の株主は、出資金額以上の責任を負わない「有限責任」である。『合資会社』は、無限責任社員と有限責任社員との2人以上で構成されている。
 また,合名会社・合資会社はともに法人も社員になることができる。そして、会社の内部組織についても自由に定款で定めることができ,出資の方法も金銭だけでなく、信用や労務による出資も認められている。

 合同会社は新会社法で新たに認められた会社で社員の信用に基礎をおきながらも、「有限責任」である。社員は経営に参加しながら、合同会社の債務については、出資の額を限度に責任を負えばいい。
研究開発事業、産学連携事業などには、合同会社が適しており、法人も社員になれるので、企業同士の共同事業にも適する。しかも,会社の内部自治については、定款自治が認められている。
しかし、信用出資や労務出資は認められておらず、株式会社と同様、財産のみの出資である。

(5)なお,LLP(有限責任事業組合)という名のまったく新しい組織が、新会社法に関連して経済産業省の管轄で誕生した。LLPはLLC(合同会社)に似ているが会社ではなく組合の団体である。
 知的産業などの起業にもつかいやすい組織で、株式会社では出資者(株主)と執行者(取締役)が分離しているが、LLPでは出資者が執行者で、出資者が経営にも関わることが義務である。
 しかし、最大メリットは、税金が会社に対してかかるのではなく、出資者一人ひとりに対してかかる(構成員課税)。LLPは「会社」ではないので法人税はかからない。この点が合同会社との一番の違いで,これまでの会社だと、出資者が個人だった場合は、会社がまず法人税を支払い、そして個人も所得税を支払うことであったが、LLPを使うとこれが個人の所得税だけですませることができる。
さらにこの税金―本化には、節税メリットもついている。たとえば、個人としては利益があり黒字で税金をたくさん納めないといけない場合も、出資先のLLPが赤字なら、一本化されて(損益通算))、税金を減らすことができる(ただし,損益通算できる赤字は出資額が限度)。
 これまで 組合員は無限責任であったが,有限責任ならば、組合が債務を負っても出資金額のみの責任を負うだけですむ。そして、有限責任の条件として、法務局に登記をする必要や、決算書作成の負担がある。
また、LLPでは合名会社・合資会社・合同会社と同様に、利益分配を自由に決めてよい内部自治がある。

(6)お金以外の財産を出資して会社をつくるのに「変態設立事項」がある。具体的には、「現物出資」や「財産印受」などである。この場合に、その車などが200万円なら本当にそれだけの価値があるのかは分からない。この事実を確認するため、現行法では裁判所が選任した検査役の調査などが必要とされている。また「財産引受」は、会社ができたあとに、営業に使う財産を譲り受けると会社ができる前に事前に約束しておくことでこれらの事項は、ともに会社ができる前の行為で、定款に記載しなければ効力が生じない。
また事後設立は会社ができてから 2年以内に、会社の営業に使う財産を資本金の5%以上の金額で買うことである。「財産引受」が会社ができる前の行為であったのに対して、「事後設立」は会社ができた後の行為で,事後設立に該当する場合には株主総会の特別決議が必要である。また、「変態設立事項」と同様に検査役の調査などを受ける必要があった。
新会社法では、「事後設立」について、検査役の調査を受ける必要がなくなり、買い取る財産が、純資産額の20%以下であれば株主総会の特別決議も不要になる。


8.会社の配当


 (1)現行法では、配当は期末と中間の2回しか行うことができず,中小企業では中間決算を行うことが少ないため、実際には配当は年1回という会社が多い。
 しかし新会社法によって、いつでも株主総会の決議によって配当を行えるようになるし期中に簡易決算手続きを行い、そのときまでの利益を配当金に合算することができるようになる。実務的には、期中の段階で決算を行うのは手数がかかるため、最高でも年4回、四半期毎に配当を行う会社が出てくるであろう。
 なお、純資産頼が300万円未満の増合には、配当を行うことはできず,配当金を多く払いすぎてしまった取締役は、支払った配当金を、会社に返済する責任を負う。(ただし、自分に過失がないことを証明すれば、その責任から逃れられる)。
 
 (2)配当金については、配当金支払い時に20%の所得税が源泉徴収される。しかも1銘柄につき1年間に受ける配当金が10万円超の場合には、確定申告が必要になる。
 上場会社の株式にかかる配当については、配当金支払い時に7%の所得税と、3%の住民税が天引きされる(2008年3月末まで)ので受ける配当金の大小によらず、確定申告をする義務はない。ただし、配当控除などの関係で確定申告をしたほうが得する場合もある。

9.資本政策としての増資と減資


(1)会社のお金が足りないときは、資金を調達しなければならず,資金調達の方法は、借入が一般的であるが、出資を受けて会社の資本金を増やすという方法もある(増資)。
増資は、返さなくてよい資金を増やすことなので、会社の資金繰りにも効果的で,増資が検討されるケースは、事業の提携先が必要なお金を出資してくれる場合などである。事業で利益を出せば、その提携先(株主)には「配当」という形で利益を分配できる。
また、新会社法では最低資本金の規制がなくなるので、とりあえず手元にあるお金で会社をつくつてしまうケースが増える。あとで、お金の準備ができたときに、追加で出資するという、二段階に分けた出資も考えられよう。
また,借入金が多い会社は危ない会社のように見えるが、これを資本金に振り替えることを検討してもよい。会社にとっては、返さなければならないお金が、返さなくてよいお金に振り替えるので、会社の決算書の内容がよくなる。
増資の手続きについては、商法(改正後は新会社法)で決められている。手続きとしては、取締役(または取締役会)で株式の発行を決め,株主への通知する。通知から一定期間を置いたあとに、お金の払い込みがあり,資本金の額や発行している株式数の変更登記となる。
なお、株式譲渡制限会社は、第三者割当の方法(いまの株主の持株比率と関係なく出資を受ける方法)で増資する場合には、取締役(または取締役会)だけでなく、株主総会で承認を受ける必要がある。
新会社法では、資金の払い込みについての金融機関の証明書(登記の際に必要)が、残高証明等の方法にされるなど、新株発行の手続きが簡単になるよう見直されている。

(2)資本金を減らすことを「減資」という。新会社法では、最低資本金の規制がなくなくなるので、今後、減資を行う会社も増える。
  現行法では、資本金を減少して準備金に計上することはできないが,会社法では可能で、準備金の減少についても下限の制約がなく、準備金が資本金の4分の1を下回っても差し支えない。
新会社法の施行前は、株式会社をつくるのに1000万円の資本金が必要で、資本金はもともと株主のお金で,減らした資本金は株主に返さなければならない。つまり、資本金を減らしたからといって、会社のお金が増えるわけではない。
新会社法では、最低の資本金の規制はなくなり、資本金はいくらでもよくなり,資本金1000万円の株式会社であっても、減資を行い、資本金100万円の株式会社にすることができる。
減資のうちで、株主にお金を返す場合を有償減資という。減らした資本金で累積赤字を消す場合が、減資が行われる代表的なケースである。
たとえば、資本金1500万円、累積赤字700万円の会社の場合、資本金700万円を赤字と相殺して、資本金800万円の会社とすることにより、赤字が消え,決算書の見栄えがよくなる。
ただし、会社は赤字と資本金を消すので、株主に返金する余裕はなく、決算書の科目区分のみを変更する方法で無償減資という。

(3)減資は、株主だけでなく、会社をとりまく関係者にとっても、影響のあることなので、商法(改正後は新会社法)では、資本金を減らすには、まず、株主総会の特別決議が必要である。
 株主総会の決議株主総会で決議すべき事項は、次の事項である(会社法447条)。
 @減少する資本金の額
 A減少する資本金の額の全部または一部を準備金とするときは、その旨および準備金とする額
 B資本金の額の減少がその効力を生ずる日
現行法では、減資に際して払戻し、株式消却または欠損填補を行う場合に、決議事項とされていたが、会社法では、決議事項ではない。
一方で、減資の効力発生日が決議事項となった。
なお,定時株主総会により、欠損金の填補のためだけに減資を行う場合(減資後も剰余金が生じない場合) には、普通決議で足りる(会社法309条2項9号イ・ロ参照)。

その後、借入先などの債権者に対して、1カ月以上の期間をおいて公告や通知で知らせ、意見があったら申し出てもらう機会を与える(債権者保護手続)。
 その会社の債権者は、異議を述べることができるように、次の事項が公告・通知内容である(会社法449条参照)。
 @当該資本金の額の減少の内容
 A当該株式会社の計算書類に関する事項として法務省令で定めるもの
 B債権者が一定の期間内 (1ケ月以上) に異議を述べることができる旨
 債権者が、Bの期間内に異議を述べなかったときはその債権者は、その減資について承認したものとみなされ,債権者が異議を述べた場合には、減資をしても債権者を害するおそれがない場合を除き、弁済、担保提供、信託などを行わなければ、減資をすることはできない(会社法449参照)。

また、減資の際には、直前期の決算書において決算公告を行い、決算書の内容を知らせておくことが必要である。

なお、決算公告は株式会社に義務付けられているが、非上場の会社が公告をしないからといって、百万円以下の過料を受けたという話はあまりなく、これを守っている会社は少ないのが実情であるが,今後は計算書類の重要性が増加することから変わってくるであろう。

10.社債発行方法の変更


(1)社債というと大会社の資金の調達手段のようであるが、発行方法によっては、中小企業でも取締役(または取締役会)の決議で、簡単に発行することができる。
いまは社債の発行は、株式会社のみに認められ、有限会社には認められていない。新会社法では、すでにある有限会社や、取締役1人の取締役会を置かない会社でも、社債を発行できる。社債の発行の方法については、取締役(取締役会を設置している会社は取締役会)が決める。
あいまいだった社債に関する規定が新会社法では、整備されている。たとえば、取締役会を置く会社では、取締役会で「いつからいつまでの間に、社債をどのくらい発行するか」といった大枠を決めて「この範囲内で、いつ、いくら分の社債を発行するか」といった具体的なことを代表取締役が決めることができるようになる。
これによって取締役会で決めた範囲内ならば、代表取締役が具体的に社債の発行を何回かに分けて決めることができるようになる。
 つまり,取締役会を設置している株式会社においては、取締役会で償還の金額、利率の上限及び社債の発行価格の下限のみを決議すれば足り、具体的な社債額等の決定は、代表取締役に委任することができる。これにより、代表取締役の判断により必要なときに必要な金額の社債を発行するという機動的な社債の発行も可能である。
社債を発行する場合には「社債管理者」を置かなければならないが、一定の要件を満たせば、置かなくてもよいことになつている。この要件は、いまは「社債券が50以上に分割でさないようにする」などだが、新会社法では、この要件は法務省令で定められる。

(2)なお、少人数私募という形式で証券取引法上の規制等を受けないためには、募集総額が1億円以下であること,社債取得申込の勧誘を行った相手方が50未満であること,社債取得者には証券会社や銀行などの金融関係者がいないことが必要である。この少人数私募債は発行会社自身で、直接、嫁故者に対し引受を募って発行するため、銀行等(社債管理者)との契約などの必要がない。発行できる金額は、縁故者の資金力によるところが大きいが、少人数私募債により縁故者から資金調達がやり易くなる。
借入金と較べた増合の社債の発行の利点は、返済の方法が、満期をもって元金を一括返済する点にある。借入金は分割返済が一般的なので、借りたと同時に、返済がすぐに始まる。
社債の場合は、返済期日までの3年とか5年といった期間中は返済を考えなくてもよいので、この間、資金を有効に使える。
また、社債取得者側のメリットとして、利息の税制上の取り扱いが有利という点があり、貸付金の利息は、個人の所得税では、累進評税の税率が適用されるが、社債の利息は国税15%、地方税5%の源泉分離課税ですむ。
なお、社債を発行した会社は、利息の支払いと利息に関する源泉税の納付事務が発生する。


11.企業提携−M&A(Merger and Acquisition)


(1)M&Aとは「Merger and Acquisition」の略称で,直訳すると「(企業の)合併・買収」という意味になり,通常は企業全体の合併・買収だけでなく、営業譲渡や株式譲渡、資本提携などを含めた広い意味での企業提携の総称として使われている。
M&Aには、大きく分けて企業を買う側と売る側がいる。まず、企業を買う側のメリットは、同業他社を買うことによって、自社の事業を大きくすることができる。東京三菱銀行がUFl銀行と経営統合するのは,規模の拡大を目指したものである。
 次に自社の事業と密接に関わる他社を買うことによって経営多角化、相乗効果をねらう場合がある。 楽天が証券会社やカードローン会社の買収後,さらにTBSの買収を目指したのは、既存のメディアを必要としたからである。
 また、ライブドアがよく使う手段に,新規事業を一から立ち上げるのは時間がかかるので、同じことをしている他社の事業を買うという場合がある。ライブドアは、会計ソフトなど業務用ソフトを開発・販売する弥生株式会社を買収した。弥生の普通株式や新株予約権を譲り受け、その後完全子会社化した。
自社がまるごと買収された企業は、財政基盤がしっかりした会社の傘下に入ることで、社内体制を整備することができ、一部の事業を売った企業は、売却資金が獲得できるといったメリットはもちろんのこと、本業に全精力を集中できるといったメリッ卜もある。
 
(2)M&Aとは会社を売買することなので、それが株式会社の場合、「株式を売買する」話になる(営業譲渡の場合、現金による売買が多い)。たとえばA社がB社を買いたい場合、A社はB社の株主に「B社株を売ってくれませんか?」と交渉し買った結果、B社はA社の子会社になる。また別の方法として、A社がB社の経営陣に「うちと合併しませんか?」と持ちかけ、A社はB社を吸収合併して「新A社」が誕生し(このときB社の株主が持っていたB社株は「新A社株」と交換される。

(3)従来、M&Aの手法としては株式譲渡、合併、営業譲渡くらいしかなかったが、1999年の商法改正で株式交換、株式移転が認められた。
 株式交換は,A社がB社を買いたいとき、A社はB社株主からB社株を買い取るのではなく「A社株」と交換してもらいA社の株主が増えることになるが、結果的にB社がA社の子会社になる。
この株式交換の最大のメリットは、A社に現金がなくてもできる点である。

 株式移転とは、A社株・B社株をともにC社という新会社に移転すれば、C社の下にA社・B社が存在することになり、2社が実質的に合併に近い形になり,A社・B社の旧株主は、C社の新株主になる場合である。

(4)買収騒動の影響で「対価の柔軟化」が1年先送りになった。吸収合併や株式交換の際に、A社がB社を買いたい場合、B社の経営陣に「うちと合併しませんか?」と持ちかけ、「新A社」が誕生するが,B社の株主が持っていたB社株は「新A社株」と交換されるのが通常であるが「対価の柔軟化」が認められれば、B社株を現金と交換することもできる。

つまり,吸収合併、吸収分割または株式交換の場合において、消滅会社の株主、分割会社もしくはその株主または完全子会社となる会社の株主 (消滅会社の株主等) に対して、存続会社、承躯会社または完全親会社となる会社の株式を交付せず、金銭その他の財産を交付することができる (会社法749条1項2号、751条1項3号、758条4号、760条5号、768条1項2号、770条1項3号)。
 また、交付される金銭その他の財産が適正価額より低く評価されるのを防止するために、消滅会社の株主等に対して、交付する対価の割当についての理由及び対価の内容を相当とする理由を記載した書面を開示資料とすることとされた(会社法782条1項、794条1項)。
なお、新設合併、新設分割、株式移転については、会社を新設するものであり、株式を交付しないことはありえないため、金銭その他の財産のみの交付による再編行為は認められない。
この対価柔軟化に関する規定はは、会社法施行後,1年間遅れて2007年施行された。実例も出(日興)。

 また,対価の柔軟化により、消滅会社の株主等に金銭のみを交付する合併(キャッシュ・アウト・マージャー) 等が可能となり,消滅会社の株主に対して金銭等を交付し、再編後において、存続会社の株主構成を維持することができ、少数株主の排除という点で効果があるし,上場会社と株式譲渡制限会社との合併などで、株式譲渡制限会社が存続会社となる場合など、消滅会社の株主にとって、株式よりも現金等を取得する方が魅力的な場合にも使える。

また、現金だけではなく、他社の株式や不動産を代わりに渡すこともできる。さらにA社の親会社の株式を渡すこともでき、これを「三角合併」という(A社親会社・A社・B社と3社が関わるから)。
 つまり,対価の柔軟化により消滅会社の株主等に存続会社の親会社の株式を交付する合併(三角合併)等が可能となる。
 この手法により、存続会社側の100%親子会社関係が保持される。なお、会社法においては、子会社の親会社株式の取得は原則禁止だが(会社法135条1項)、この対価の柔軟化に関連して、吸収合併等の場合において存続会社の親会社株式の取得が認められる(会社法800条)。
 また、その対価として外国親会社の株式で株式交換することにより、多額の現金を必要とせずに外国企業が日本企業を買収することが可能となる。この手法により、時価総額の大きい外国企業との再編が今後は進むであろう。

 もっとも,この「三角合併」に警戒論が発生した。外国には日本のトップ企業の数倍の株式価値を誇る巨大企業が多数存在し,「三角合併」が認められたら、そんな巨大企業の日本子会社が合併を仕掛けてきて、対価として高額な外国株式をつかうのではないか、資本力で日本が圧倒されてしまうのではないか、と恐れたのである。
 しかし,三角合併には買収先会社の株主総会の特別決議が必要で,議決権の3分の2以上の賛成は得られにくいはずである。また、外国企業の日本法人が日本の株式市場に上場していないと、三角合併は現実的にはやりづらいのであり、ドル建ての株式を株主が受け取る事態になつた場合、外国証券口座の開設が必要で、非常に手間がかかるし,税務的にも、株式を受け取った株主への課税はどうなるのか、という問題も残されている。

(5)傘下企業をたくさん持つ大企業にとって企業再編は非常に面倒な手続きである。たとえば子会社を吸収合併する場合 親会社子会社の双方で株主総会の特別決議を行う必要になる。
 そこで、新会社法ではグループ再編にあたって、要件が緩和されるなどの新しいルールが導入された。
 
 「簡易組織再編」とは、買収される会社(被買収会社)が買収会社よりもかなり小さい規模の場合、買収会社の株主総会の特別決議を省いて、取締役会決議だけでいいというものである。
 新会社法ではこの適用範囲が大きくなったが、株式譲渡制限会社については、「簡易組織再編」が認められない。これは株式譲渡制限会社における第三者割当増資の際の新株発行については株主総会の持別決議が必要なので整合性を囲ったのである。

 「略式組織再編」とは、買収会社が議決権の90%以上を保有している被買収会社に対する合併では被買収会社の株主総会の特別決議はいらず、取締役会決議だけでいいというものである (会社法784条1項、796条1項、468条参照)。つまり90%以上支配している会社で株主総会を開いても結果は見えているので省略していい。
ただし残り10%の少数株主の権利も守る必要があるので少数株主が不利益を受け入れる恐れがある次の場合は略式組織再編の差し止め請求を行うことができる。(会社法78 4条2項、796条2項)。
 @その略式組織再編行為が法令または定款に違反する場合
 A著しく不当な条件で略式組織再編が行われることにより不利益を受ける恐れがある場合
 
 なお,株式譲渡制限会社がその株式の発行や移転を伴う組織再編を行う場合には、支配関係にあるときであっても、株主総会の決議を要する(会社法784条1項、796条1項)。

(6)合併・分割を行った場合には、その種類によって、効力発生日が異なる。会社の新設を伴わないものについては、契約等の−定の日が効力発生日となる。
 会社の新設を伴うものは、従来どおり、登記の日となる。
 現行法では、吸収合併及び吸収分割について、効力発生日をその登記の日としている(商法102条等)が,会社法では、事実上の効力が発生する時期 (つまり、両社による合併契約などの登記以外の法定の手続きにより効力が発生する時期・合併期日等) となる。
 これは,実質的に効力を発生させたい日が登記所の閉庁日となるような場合には、法律上の効力
発生日と実質的な効力発生日が異なることがありうるという不都合があったからである。この変更は、吸収合併、吸収分割、株式交換についてのみ適用され、新設合併、新設分割、株式移転等会社の新設にともなうものについては、従来どおり、登記の日が効力発生日である。

(7)株式交換で金銭等を交付する場合には債権者保護手続が必要となる。
  完全親会社となる会社が株式会社の株式以外の財産を完全子会社となる会社の株主に交付する場合には、完全親会社となる会社において、債権者保護手続を要する(会社法799条1項3号)。
  これは対価の柔軟化が認められることに伴い、完全親会社は株式以外の財産を交付する場合があるためである。
 株式交換または株式移転に際しての資本等の増加限度額については、完全子会社となる会社の純資産額を基準とするのではなく、完全親会社となる会社が取得する株式の価額を基準として定める。
 この場合における具体的な株式評価の算定方法については、法務省令で規定される(会社法445条5号)。
 債権者保護手続によって異議を申し述べた債権者も、株式交換無効の訴えを提起できる(会社法828条2項11号)。

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