著作権法のフェアユース導入平成30年改正、電子出版規制平成26年改正、TPP条約等重要改正を見よう。

■平成18年著作権法の改正

趣旨:著作物の適切な保護と活用を図り、「知的財産戦略」を推進するため、緊急の課題であるIPマルチキャスト放送の著作権法上の取扱い等に関する所要の法整備を行う。

「放送の同時再送信の円滑化」については、2007年1月11日から施行。「時代の変化に対応した権利制限等」、「著作権等保護の実効性の確保」については、2007年7月1日に施行。

1 「放送の同時再送信の円滑化」

これまでIPマルチキャスト放送(電気通信役務利用放送法に基づくIPマルチキャスト技術を用いた有線電気通信の送信)による放送は「通信」行為に分類され、地上波などの番組をIP放送事業者が受信し、リアルタイムに再配信するには、事前に俳優やレコード会社の許諾を得ることが必要で手続きが煩雑だった。
IPマルチキャスト放送は、放送される番組が不特定の受信者の手元に同時に届くものではなく、求めに応じて個別に送信されるので、「インターネット送信」と同様に「自動公衆送信」の概念で位置づけられ、著作権法上の「放送」には該当しないものである。
そこで法改正により著作権隣接権者に対する許諾はCATVと同様に不要となり、2011年の地上デジタル放送への全面移行に伴って難視聴地域での活用が想定されるIP放送の円滑な普及が期待される。
つまり、具体的には実演家やレコード製作者の許諾権をIPマルチキャスト放送による同時再送信に対しては制限し、「補償金」の制度をもって運用できるように改正し、有線放送による同時再送信については、これまで、実演家やレコード製作者が無権利であったのに対し、これに「報酬請求権」を付与することで、有線放送とIPマルチキャスト放送とのバランス調整実施した。
※なお、著作者の許諾権は制限されていません。
★条文関係
○(第三十八条関係)
放送される著作物等は、非営利かつ無料の場合には、専ら当該放送に係る放送対象地域において受信されることを目的として、自動公衆送信することができることとすること。
○(第九十四条の二関係)
放送される実演を有線放送した有線放送事業者は、実演家に報酬を支払わなければならないこととすること。
○(第九十五条及び第九十七条関係)
商業用レコードを用いた放送又は有線放送を受信して放送又は有線放送を行った放送事業者等は、実演家又はレコード製作者に二次使用料を支払わなければならないこととすること。
○(第百二条関係)
放送される実演又はレコードは、専ら当該放送に係る放送対象地域において受信されることを目的として、送信可能化することができることとするとともに、当該送信可能化を行う者は、実演家又はレコード製作者に補償金を支払わなければならないこととすること。

2「時代の変化に対応した権利制限等」

様々な社会のニーズ等を踏まえて、以下の利用行為について、著作権者に無許諾で行えるようにする。
ア 視覚障害者に対する「録音図書のインターネット送信」
イ 「特許審査」等における文献の複製
ウ 「薬事行政手続」における文献の複製
エ 機器の「保守・修理」等におけるバックアップのための複製
★条文関係
○(第二条関係)
同一構内の無線通信設備による送信について、公衆送信の範囲から除外すること。
○ (第三十七条関係)
視覚障害者情報提供施設等は、公表された著作物について、専ら視覚障害者の用に供するために、録音図書を用いて自動公衆送信することができることとすること。
○ (第四十二条関係)
著作物は、特許や薬事等に関する審査等の手続のために必要と認められる場合には、その必要と認められる限度において、複製することができることとすること。
○ (第四十七条の三関係)
記録媒体を内蔵する機器の記録媒体に記録されている著作物は、必要と認められる限度における保守若しくは修理又は当該機器の欠陥等による交換のため、一時的に複製することができることとすること。

3「著作権等保護の実効性の確保」

先の通常国会で行われた産業財産権制度との調和を踏まえて、輸出行為の取締りと罰則の強化を図る。これまで模倣品・海賊版の「輸入」が国際取引に関連した取締対象だったが、2007年1月からは「輸出」も対象となる。
○ 輸出行為の取締り
著作権等の侵害品の「輸出」及び「輸出を目的とする所持」を取締りの対象とする。
★条文関係
○(第百十三条関係)
著作権等を侵害する行為によって作成された物を、情を知って業として輸出し又は輸出目的で所持する行為を侵害とみなす行為とすること。
○(第百十九条及び第百二十四条関係)
著作権、出版権及び著作隣接権の侵害に係る刑事罰について、懲役刑及び罰金刑の上限を引き上げるとともに、法人処罰に係る罰金刑の上限を引き上げること。
○(第百二十四条関係)
秘密保持命令違反に係る刑事罰について、法人処罰に係る罰金刑の上限を引き上げること。
<個人罰則> 懲役刑: 5年以下から10年以下、罰金刑: 500万円以下から1,000万円以下
<法人罰則> 1億5,000万円以下から3億円以下

 

■平成19年改正「映画の盗撮の防止に関する法律」

「映画の盗撮防止」

著作権法第30条第1項では,私的使用を目的とするときは,例外的に著作権者の許諾なく著作物の複製ができることとされていますが,映画の盗撮の場合については,この規定は適用されません。映画の盗撮により著作権を侵害した者は,私的使用目的で行った場合であっても,罰則(10年以下の懲役,又は1,000万円以下の罰金又はこれらの併科)の対象となります。
なお,この措置は,日本国内における最初の有料上映後8月を経過した映画については適用されません。(第4条関係)

 

■「平成21年の著作権法改正」

1.国会図書館法改正に伴う改正
(1)国立国会図書館法によるインターネット資料の収集のための複製(第42条の3)
(2)複製物の目的外使用等(第49条)
(3)著作隣接権の制限(第102条)

2.平成21年通常国会での改正

(1)インターネット等を活用した著作物利用の円滑化を図るための措置

インターネット情報の検索サービスを実施するための複製等に係る権利制限(法第47条の6,令第7条の5,規則第4条の4関係)
権利者不明の場合の利用の円滑化
[1] 著作隣接権者不明等の場合の裁定制度の創設(法第103条関係)
[2] 裁定申請中の利用を認める新制度の創設(法第67条の2,法第103条関係)
[3] 権利者捜索のために利用者が支払うべき「相当な努力」の内容の明確化(法第67条第1項,令第7条の7,告示関係)
ア 広く権利者情報を掲載している名簿,名鑑,検索サイト等を閲覧すること
イ 広く権利者情報を保有している著作権等管理事業者,出版社,学会等に照会すること
ウ [1]日刊新聞紙への掲載又は[2]社団法人著作権情報センターのウェブサイトへ30日以上の期間継続して掲載することにより,公衆に対して権利者情報の提供を求めること
国会図書館における所蔵資料の電子化(複製)に係る権利制限(法第31条第2項関係)
インターネット販売等での美術品等の画像掲載に係る権利制限
美術又は写真の著作物の譲渡等の申出のために行う商品紹介用画像の掲載等(複製及び自動公衆送信)について,著作権者の利益を不当に害しないための政令で定める措置(画像を一定以下の大きさ・精度にすること等)を講じるとの条件の下で,権利制限が認められました。(法第47条の2,令第7条の2,規則第4条の2関係)
情報解析研究のための複製等に係る権利制限(法第47条の7関係)
送信の効率化等のための複製に係る権利制限(法第47条の5,令第7条の3,令第7条の4,規則第4条の3関係)
電子計算機利用時に必要な複製に係る権利制限(法第47条の8関係)

(2)違法な著作物の流通抑止のための措置

著作権等侵害品の頒布の申出の侵害化(法第113条第1項第2号関係)
私的使用目的の複製に係る権利制限規定の範囲の見直し
著作権等を侵害する自動公衆送信を受信して行うデジタル方式の録音又は録画を,その事実(=著作権等を侵害する自動公衆送信であること)を知りながら行う場合は,私的使用目的の複製に係る権利制限の対象外とされました。ただし,罰則は適用しないこととされています。(法第30条第1項第3号関係)
(3)障害者の情報利用の機会の確保のための措置(法第37条第3項,法第37条の2,令第2条,令第2条の2,規則第2条の2関係)
(4)その他  登録原簿の電子化(法第78条第2項関係)

 

■「平成24年の著作権法改正」

(1)いわゆる「写り込み」(付随対象著作物の利用)等に係る規定の整備
(2)国立国会図書館による図書館資料の自動公衆送信等に係る規定の整備
(3)公文書等の管理に関する法律等に基づく利用に係る規定の整備
(4)著作権等の技術的保護手段に係る規定の整備
(5)違法ダウンロードの刑事罰化に係る規定の整備

1.著作権等の制限規定の改正(著作物の利用の円滑化)

デジタル化・ネットワーク化の進展に伴い、(1)著作物の利用態様の多様化等が進む一方、(2)著作物の違法利用・違法流通が常態化している中、以下のとおり規定を整備。
(1)の観点から、著作物等の利用を円滑化するため、いわゆる「写り込み」等に係る規定等を整備。
(2)の観点から、著作権等の実効性確保のため、技術的保護手段に係る規定等を整備。
改正の趣旨
①いわゆる「写り込み」(付随対象著作物としての利用)等に係る規定の整備
下記の著作物の一定の利用行為につき、著作権等の侵害にならないとする規定を整備。
○ 付随対象著作物としての利用(第30条の2関係)
(例) 写真撮影等において本来の対象以外の著作物が付随して対象となる、いわゆる「写り込み」
○ 許諾を得るための検討等の過程に必要と認められる利用(第30条の3関係)
(例) 許諾前の資料の作成
○ 技術の開発又は実用化のための試験の用に供するための利用(第30条の4関係)
(例)録音・録画に関するデジタル技術の研究開発・検証のための複製等
○ 情報通信の技術を利用した情報提供の準備に必要な情報処理のための利用(第47条の9関係)
(例)サーバ内で行われるインターネット上の各種複製
② 国立国会図書館による図書館資料の自動公衆送信に係る規定の整備
国立国会図書館は、絶版等資料について、図書館等に対して自動公衆送信を行うことができることとするとともに、図書館等は、利用者の求めに応じて、国立国会図書館から自動公衆送信された絶版等資料の一部複製を行うことができることとする。
③公文書等の管理に関する法律等に基づく利用に係る規定の整備
国立公文書館の長等は、公文書等の管理に関する法律等の規定により、著作物等を公衆に提
供すること等を目的とする場合には、必要と認められる限度において、当該著作物等を利用できる
こととする。

2.著作権等の保護の強化

①現行法上、著作権等の技術的保護手段の対象となっている保護技術(VHSなどに用いられて
いる「信号付加方式」の技術。)に加え、新たに、暗号型技術(DVDなどに用いられている技術)についても技術的保護手段として位置づけ、その回避を規制するための規定を整備。②違法ダウンロード刑事罰化に係る規定の整備(内閣提出法案に対する修正)
②私的使用の目的で、有償で提供等されている音楽・映像の著作権等を侵害する自動公衆送信を受信して行う録音・録画を、自らその事実を知りながら行うこと(違法ダウンロード)により、著作権等を侵害する行為について罰則を設ける等の規定を整備。
施行期日:平成25年1月1日(1③、2については平成24年10月1日、2②に関して国民に対する啓発等について定めた附則の規定については公布日(平成24年6月27日)。)

 

■平成26年著作権法改正

1.近年、デジタル化・ネットワーク化の進展に伴い、電子書籍が増加する一方、出版物が違法に複製され、インターネット上にアップロードされた海賊版被害が増加していることから、紙媒体による出版のみを対象とした出版権制度を見直し、電子書籍に対応した出版権の整備を行う。

(1) 出版権の設定(第79条関係)
著作権者は、著作物について、以下の行為を引き受ける者に対し、出版権を設定することができる。
① 文書又は図画として出版すること(記録媒体に記録された著作物の複製物により頒布することを含む) 【紙媒体による出版やCD-ROM等による出版】
② 記録媒体に記録された著作物の複製物を用いてインターネット送信を行うこと
【インターネット送信による電子出版】

(2) 出版権の内容(第80条関係)
出版権者は、設定行為で定めるところにより、その出版権の目的である著作物について、次に掲げる権利の全部又は一部を専有する。
① 頒布の目的をもって、文書又は図画として複製する権利(記録媒体に記録された電磁的記録として複製する権利を含む)
② 記録媒体に記録された著作物の複製物を用いてインターネット送信を行う権利

(3) 出版の義務・消滅請求(第81条、第84条関係)
① 出版権者は、出版権の内容に応じて、以下の義務を負う。ただし、設定
2.また、視聴覚的実演に関する国際的な保護を強化するため、視聴覚的実演に関する北京条約の実施に伴う規定の整備を行う。

 

■平成30年著作権法改正

平成30年5月18日に成立,一部の規定を除いて,平成31年1月1日に施行

(1)デジタル化・ネットワーク化の進展に対応した柔軟な権利制限規定の整備

我が国の企業の法令順守意識,国民の著作権に対する理解の度合い,訴訟制度,立法府と司法府の役割分担の在り方,罪刑法定主義との関係といった観点を総合すれば,フェアユース規定のような規定ではなく,明確性と柔軟性の適切なバランスを備えた複数の規定の組合せによって対応することが最も望ましい。

具体的には,通常権利者の利益を害しないと考えられる行為類型(下記[1]及び[2])と,権利者に及び得る不利益が軽微な行為類型(下記[3])について,それぞれ適切な柔軟性を持たせた規定を整備する。

[1]著作物に表現された思想又は感情の享受を目的としない利用(第30条の4関係)

著作物は,技術の開発等のための試験の用に供する場合,情報解析の用に供する場合,人の知覚による認識を伴うことなく電子計算機による情報処理の過程における利用等に供する場合その他の当該著作物に表現された思想又は感情を自ら享受し又は他人に享受させることを目的としない場合には,その必要と認められる限度において,利用することができることを規定しています。

これにより,例えば人工知能(AI)の開発のための学習用データとして著作物をデータベースに記録する行為等,広く著作物に表現された思想又は感情の享受を目的としない行為等を権利者の許諾なく行えることとなるものと考えられます。

なお,この規定の整備に伴い,現行第30条の4及び第47条の7は新しい第30条の4に整理・統合することとしました。

[2]電子計算機における著作物の利用に付随する利用等(第47条の4関係)

電子計算機における利用に供される著作物について,当該利用を円滑又は効率的に行うために当該利用に付随する利用に供することを目的とする場合(第1項)や,電子計算機における利用を行うことができる状態を維持し,又は当該状態に回復することを目的とする場合(第2項)には,その必要と認められる限度において,利用することができることを規定しています。

これにより,例えばネットワークを通じた情報通信の処理の高速化を行うためにキャッシュを作成する行為や,メモリ内蔵型携帯音楽プレイヤーを交換する際に,一時的にメモリ内の音楽ファイルを他の記録媒体に複製する行為等を権利者の許諾なく行えることとなるものと考えられます。

なお,この規定の整備に伴い,現行第47条の4,第47条の5,第47条の8及び第47条の9は新しい第47条の4に整理・統合することとしました。

[3]電子計算機による情報処理及びその結果の提供に付随する軽微利用等(第47条の5関係)

電子計算機を用いて,情報を検索し又は情報解析を行い,及びその結果を提供する者は,公表された著作物又は送信可能化された著作物について,その行為の目的上必要と認められる限度において,当該行為に付随して,軽微な利用を行うこと等ができることとすることを規定しています。

これにより,例えば特定のキーワードを含む書籍を検索し,その書誌情報や所在に関する情報と併せて,書籍中の当該キーワードを含む文章の一部分を提供する行為(書籍検索サービス)や,大量の論文や書籍等をデジタル化して検索可能とした上で,検証したい論文について,他の論文等からの剽窃の有無や剽窃率,剽窃箇所に対応するオリジナルの論文等の本文の一部分を表示する行為(論文剽窃検証サービス)等を権利者の許諾なく行えることとなるものと考えられます。

この他,本条の趣旨が妥当する新たなニーズが発生した場合には,政令で定めることにより当該ニーズに係る行為を権利制限の対象として追加することができることとしました。

なお,この規定の整備に伴い,現行第47条の6は新しい第47条の5に整理・統合することとしました。

(2)教育の情報化に対応した権利制限規定等の整備

学校等の教育の質の向上や教育機会の充実等に資するよう,ICTを活用した教育における著作物等の利用の円滑化を図るため,学校その他の教育機関における権利制限規定(第35条)において,現在権利制限の対象となっているコピー(複製)や遠隔合同授業におけるネットワークを通じた送信(公衆送信)に加えて,新たに遠隔合同授業のための公衆送信以外の公衆送信等についても広く対象とするとともに,今回新たに権利制限の対象となる公衆送信について権利者に補償金請求権を付与することとしています。

これにより,例えば学校等の授業や予習・復習用に,教師が他人の著作物を用いて作成した教材を生徒の端末に公衆送信する行為等について,文化庁長官が指定する単一の団体への補償金支払を条件として,権利者の許諾なく行えることとなるものと考えられます。

(3)障害者の情報アクセス機会の充実に係る権利制限規定の整備

障害者の情報へのアクセス機会の向上のため,視覚障害者等のために書籍の音訳等を権利者の許諾なく行うことを認める権利制限規定(第37条第3項)において,音訳等を提供できる障害者の範囲について,現行法で対象として明示されている視覚障害や発達障害等のために視覚による表現の認識に障害がある者に加え,新たに,手足を失ってしまった方々など,いわゆる肢体不自由等の方々が対象となるよう規定を明確にしました。また,権利制限の対象とする行為について,現行法で対象となっているコピー(複製),譲渡やインターネット送信(自動公衆送信)に加えて,新たにメール送信等を対象とすることとしています。これにより,例えば肢体不自由で書籍等を保持できない方のために音訳図書を作成・提供することや,様々な障害により書籍等を読むことが困難な者のために作成した音訳データをメール送信すること等を権利者の許諾なく行えることとなるものと考えられます。

(4)アーカイブの利活用促進に関する権利制限規定の整備等
我が国の有する文化資料を適切に収集・保存し,またそれらの効果的な活用を促進することで我が国の文化創造の基盤となる知的インフラの強化に貢献するため,アーカイブの利活用促進に関する以下の整備を行います。

[1]国立国会図書館による外国の図書館への絶版等資料の送信(第31条関係)

絶版等の理由により一般に入手困難な資料で,デジタル化した資料を,国立国会図書館が他の図書館等に送信することができる図書館送信サービスについて,日本文化の発信等の観点から,外国の図書館等の施設に対しても送信できることを規定しています。これにより,日本研究を行っている外国の図書館等に貴重な資料を提供できることとなるものと考えられます。

[2]作品の展示に伴う美術・写真の著作物の利用(第47条関係)

技術進歩に伴う見直しとして,美術館等において,展示作品の解説や紹介を目的とする場合には,必要と認められる限度において,小冊子に加えて,タブレット端末等の電子機器へ掲載できること等を規定(第1項,第2項)しています。

これにより,例えば,会場で貸出される電子機器を用いて,より作品の細部を拡大して制作手法を解説することや,展示方法の制約により観覧者が目視しづらい立体展示物の底面や背面の造形を解説すること等が権利者の許諾なく行えることとなるものと考えられます。

また,同様に近年の情報通信技術の発展により,美術館等に行く際に,施設のウェブサイトやメールマガジン等で展示作品の情報を調べることが一般的になっていることを踏まえ,展示作品に関する情報を広く一般公衆に提供することを目的とする場合には,必要と認められる限度において当該作品に係る著作物のサムネイル画像(作品の小さな画像)をインターネットで公開できること等を規定(第3項)しています。

[3]著作権者不明等著作物の裁定制度の見直し(第67条等関係)

著作権者不明等著作物の裁定制度は,著作物の権利者が不明等の場合に,文化庁長官の裁定を受け,かつ通常の使用料の額に相当するものとして文化庁長官が定める額の補償金を著作権者のために供託することで,当該著作物を利用することができるものです。今般の改正では,補償金等の支払を確実に行うことが期待できる国や地方公共団体等について,事前の供託を求めないものとし,権利者と連絡をすることができることになった際に,事後的に権利者に補償金を支払うことを認めることを規定(第2項)しています。同様に,申請中利用に当たって供託をすることが求められる担保金も,国や地方公共団体等については免除し,権利者が現れた場合に,利用に係る補償金を直接権利者に支払えば足りることとしています(第67条の2)。

(5)施行期日
この法律は,上記(1)デジタル化・ネットワーク化の進展に対応した柔軟な権利制限規定,(3)障害者の情報アクセス機会の充実に係る権利制限規定,(4)アーカイブの利活用促進に関する権利制限規定に係る改正事項については平成31年1月1日に,上記(2)教育の情報化に対応した権利制限規定に係る改正事項については公布の日から起算して3年を超えない範囲内において政令で定める日に,それぞれ施行される。

 

■TPPと著作権法改正

・環太平洋パートナーシップ協定の締結に伴う関係法律の整備に関する法律(平成28年法律第108号)

環太平洋パートナーシップ協定(以下「TPP12協定」という。)は平成27年10月に大筋合意に至り,平成28年2月に署名されました。これを受け,第192回国会において「環太平洋パートナーシップ協定の締結に伴う関係法律の整備に関する法律」(以下「TPP12整備法」という。)が平成28年12月9日に成立し,同月16日に平成28年法律第108号として公布されました。

※オーストラリア,ブルネイ,カナダ,チリ,日本,マレーシア,メキシコ,ニュージーランド,ペルー,シンガポール,米国及びベトナム。

TPP12整備法は,著作権法を含む11法の改正を内容とするものですが,一部を除きTPP12協定が日本国について効力を生ずる日から施行することとされていました。

・環太平洋パートナーシップ協定の締結に伴う関係法律の整備に関する法律の一部を改正する法律(平成30年法律第70号)について

平成29年1月,米国がTPP12協定の離脱を表明したため,米国以外の11か国による交渉が行われ,平成30年3月8日に「環太平洋パートナーシップに関する包括的及び先進的な協定」(以下「TPP11協定」という。)が署名されました。これを受け,第196回国会において「環太平洋パートナーシップ協定の締結に伴う関係法律の整備に関する法律の一部を改正する法律」(以下「TPP11整備法」という。)が平成30年6月29日に成立し,同年7月6日に平成30年法律第70号として公布されました。

改正の概要
(1)著作物等の保護期間の延長(第51条第2項,第52条第1項,第53条第1項,第101条第2項第1号及び第2号関係)
著作物等の保護期間について,改正前の著作権法においては,著作物の保護期間の終期は原則として著作者の死後50年とされており(映画の著作物については公表後70年まで),実演やレコードについても,それぞれの起算点から50年とされていましたが,今回の改正により,著作物,実演及びレコードの保護期間の終期を,それぞれの起算点から70年とすることとしています。

(2)著作権等侵害罪の一部非親告罪化(第123条第2項及び第3項関係)
改正前の著作権法においては,著作権等を侵害する行為は刑事罰の対象となるものの,これらの罪は親告罪とされており,著作権者等の告訴がなければ公訴を提起することができませんでしたが,今回の改正により,著作権等侵害罪のうち,以下の全ての要件に該当する場合に限り,非親告罪とし,著作権等の告訴がなくとも公訴を提起することができることとしています。

[1]侵害者が,侵害行為の対価として財産上の利益を得る目的又は有償著作物等(権利者が有償で公衆に提供・提示している著作物等)の販売等により権利者の得ることが見込まれる利益を害する目的を有していること
[2]有償著作物等を「原作のまま」公衆譲渡若しくは公衆送信する侵害行為又はこれらの行為のために有償著作物等を複製する侵害行為であること
[3]有償著作物等の提供又は提示により権利者の得ることが見込まれる「利益が不当に害されることとなる場合」であること
これにより,例えばいわゆるコミックマーケットにおける同人誌等の二次創作活動については,一般的には,原作のまま著作物等を用いるものではなく,市場において原作と競合せず,権利者の利益を不当に害するものではないことから,上記[1]~[3]のような要件に照らせば,非親告罪とはならないものと考えられる一方で,販売中の漫画や小説の海賊版を販売する行為や,映画の海賊版をネット配信する行為等については,非親告罪となるものと考えられます。

(3)著作物等の利用を管理する効果的な技術的手段に関する制度整備(アクセスコントロールの回避等に関する措置)(第2条第1項第21号,第113条第3項,第119条第1項,第120条の2第1項第1号及び第2号関係)
改正前の著作権法においては,アクセスコントロール機能のみを有する保護技術については,技術的保護手段の対象とはされていませんでしたが,今回の改正により,従前の技術的保護手段に加え,アクセスコントロール機能のみを有する保護技術について,新たに「技術的利用制限手段」を定義した上で,技術的利用制限手段を権原なく回避する行為について,著作権者等の利益を不当に害しない場合を除き,著作権等を侵害する行為とみなして民事上の責任を問いうることとするとともに,技術的利用制限手段の回避を行う装置やプログラムの公衆への譲渡等の行為を刑事罰の対象とすることとしています。

(4)配信音源の二次使用に対する使用料請求権の付与(第95条第1項関係)
改正前の著作権法においては,商業用レコード(市販の目的をもって製作されるレコードの複製物)を用いて放送や有線放送が行われた場合,実演家及びレコード製作者は放送事業者等に対し二次使用料請求権を有することとしており,CD等の商業用レコードを介さずインターネット等から直接配信される音源(いわゆる「配信音源」)を用いて放送や有線放送が行われた場合においては,二次使用料請求権は発生しませんでしたが,今回の改正により,実演家及びレコード製作者に対し,配信音源の二次使用について,商業用レコードと同様に二次使用料請求権を付与することとしています。

(5)損害賠償に関する規定の見直し(第114条第4項関係)
著作権等侵害に対する損害賠償請求について立証負担の軽減を行うため,現行規定に加えて,侵害された著作権等が著作権等管理事業者により管理されている場合には,著作権者等は,当該著作権等管理事業者の使用料規程により算出した額を損害額として賠償を請求することができることとしています。

(6)施行期日
これらの改正事項については,TPP11協定が日本国について効力を生ずる日(※)から施行されることとなっています。

(※)TPP11協定は,同協定の署名国のうち少なくとも6又は半数のいずれか少ない方の国が国内法上の手続を完了したことを寄託者に通報してから60日後に効力を生ずることとされています(TPP11協定第3条)。

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