変わる遺言書の作成実務:改正相続法による遺言書の書き方ポイント その2

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1.改正相続法で相続人関係で遺言書を残した方がいい代表的パターン

【第1位】子どものいない夫婦

(1)夫婦の一方死亡時に配偶者の「親」が生きていた場合

遺留分の定めにより、親は二分の1の三分の1で少なくとも六分の1の強い権利を持つので、配偶者名義の財産を自分の名義にする、預貯金を払い戻そうとするなどの時に、全く無視できないであろう。同意と印鑑証明書がすんなり出てくるかどうか。

遺言を書いておけば、遺留分の権利は改正相続法で債権に変わったので、遺言の効力が優先して、自分名義に圧倒的にしやすくなろう。

殊に、嫁と姑の関係等で義理の親との関係が微妙な時は遺言が不可欠であろう。

(2)夫婦の一方死亡時に配偶者の親は亡くなっていたが「兄弟姉妹」がいた場合

この場合は、兄弟姉妹には遺留分がないので、何もせずに放っておけば、四分の1の権利主張がされてかなり苦労することは目に見えている。

是非とも、遺言で「全財産を配偶者に相続させる云々」の一文を入れよう。

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第一〇四二条(遺留分の帰属及びその割合)
兄弟姉妹以外の相続人は、遺留分として、次条第一項に規定する遺留分を算定するための財産の価額に、次の各号に掲げる区分に応じてそれぞれ当該各号に定める割合を乗じた額を受ける。
一 直系尊属のみが相続人である場合 三分の一
二 前号に掲げる場合以外の場合 二分の一
2相続人が数人ある場合には、前項各号に定める割合は、これらに第九百条及び第九百一条の規定により算定したその各自の相続分を乗じた割合とする。

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【第2位】相続人がいない人

この場合に、本当に相続人がいないのかきちんと調べていなくて、世間話などから勝手に判断して思い込んでいるだけの時もある。無料法律相談でも、相続が専門でなくていい加減なことがあるから気を付ける必要がある。

大学の講義で、「笑う相続人」の話を大学教授が何回かいろいろな事例で興味深く話してくれたことがある。

配偶者の兄弟姉妹とは次第に疎遠になっていき全く音信不通になっている場合も京都での相続おもいやり相談室の無料相談でしばしばある。実は同じ京都に姪が住んでいて権利を主張してきたのだ。

その背景には、戦後の民法改正の影響もあって、甥や姪にまで、親戚付き合いや一体性などが消滅して、年賀状などのやり取りをしない時代になってしまった。情けないことだ。

いずれにしろ、遺留分の関係でも遺言があった方が圧倒的にいい。

なお、相続おもいやり相談室の当職はこの時は、寄付を勧めている。しかし、元の勤務先や世話になった病院や福祉施設まではいいが、それ以上になるとなかなかモチベーションが上がらないので、決まりにくいのだ。「日本財団 遺贈寄付サポートセンター」なども悪くはないかもしれないが、当職は何回かのこの団体とのやり取りでちょっと嫌になって辞めている。理由は想像にお任せするが、一言だけ言うと、寄付についてしつこいのは性に合わない。寄付は元は善意でしょう。それを忘れないように。

【第3位】相続時にトラブルになりそうな(起こしそうな)相続人がいる場合

まず、アルツハイマーや病気で事理弁識能力が低い相続人がいる場合は、遺言書がないと、遺産分割協議なるが話し合いに参加できないので、急いで成年後見人等を選任し、相続人の代わりに遺産分割協議に参加してもらうことになる。これはかなり難儀なのと時間がかかる。

遺言書があれば、遺留分の点を除き、遺言内容のままで権利関係がほぼ確定していく。

また、相続おもいやり相談室の当職も経験したことが何度もあるが、外国に居住している相続人、これは普通のことになってしまったし、その外国が領事館などの関係で電話がうまくつながって手続きが進む場合もあれば、そもそも電話そのものに苦労することがある、当職もゆっくりとであれば簡単な会話は可能であるが、早口で英語を話された分には手続き依頼や交渉は無理である。

どこの外国に住んでいるかわからない場合はもうお手上げで裁判所の公示送達などを利用するしかなくなるが、日本に住んでいる場合でも何度も苦労した。

まるで探偵のように、恐らくここに住んでいるはずとひそかに立って見張っていたことも一度や二度ではない。寒かったなー。

そもそも、遺産分割協議は相続人全員で行う必要があるので、行方不明者を加えないでした遺産分割協議は無効なのだ。当たり前のことであるが。そこで、家庭裁判所に不在者財産管理人選任の申立てをし、家庭裁判所の許可を得て、行方不明者の代わりに財産管理人が協議に参加することになる。

ぜひとも、このようなことが予想される場合は完全ではないが、間違いのない人に財産を相続させるように遺言してもしも将来帰ってきて遺留分の請求があったら渡すことにすればいいのだ。

また、当職も細部までわからない利害や感情などからの色々な理由で被相続人の財産に強い執着がある相続人がいる場合には、何度も遭遇している。残念ながら、相続おもいやり相談室の当職は短答式は数回合格しても最終司法試験に合格しなかった悲しい人なので、交渉をするわけにはいかず、委任状に基づいてやらせてほしいと頼むしかないのでそうしてやっている。

そこで、自分がかかわった方の財産管理や遺言では、このような可哀そうな方が出てこないように最大限の努力をしているのだ。

資産があって一流と言われているトンデモ弁護士を雇って、声の大きい方が得することの無いようにしませんか。善人が苦労しないように遺言書を作りましょうや。

2.相続人の数が多い(実務的には対等地位が3人以上)場合は遺言書が有効

3人以上の対等地位の相続人がいると相続における協議での人間関係が難しくなる。被相続人との関係で三人三様だからである。また、相性の問題もある。被相続人との人間関係の濃淡もある。

また、高齢化社会で寿命が延びると、先に子供が死んだり兄弟姉妹が死んだりとするのが当たり前なので現代社会では必然的に相続人は増えているのである。もっとも少子化も同時に進んでいるのでもうあと10年もすれば様相は変わるだろうが。

そこで、親族の関係も疎遠になっていて、その中で自分に近い人に相続させることが普通であって、その時は遺言書が有効なのである。

また、離婚率のピークは平成時代の終わりに過ぎたが、被相続人が離婚してから再婚するときに前婚でもうけた子どもがいると、再婚後の子供と対等の相続権を持つ。すっかり、前婚の配偶者とのみ生活していているから何の主張もしてこないと思ったら現代社会でそういう例はほぼ相続おもいやり相談室の当職の経験ではない。ほぼ揉めるのだ。

相続放棄を迫ってもそうはいかない。ドラマみたいだが、被相続人から前婚の子供がいたことを全く知らずに人生を送ることもあるのだ。このような境遇の人生を送った被相続人は遺言書が有効である。誰に何を与えるか決めておくとよいだろう。

なお、相続人には入ってこないであるが、永い人生でお世話になった人や法人に何らかの遺贈をした場合もあろうが、そういう場合も他の相続人との関係でもめないように遺言書で書いておくとよい、相続おもいやり相談室の当職も遺言書作成のインタビューやカウンセリングで詳しく聞いて原案に盛り込んでいるが、そうしておけば、遺言執行人である当職に小言は言ってきても従う。

なお、寒々とした話だが、被相続人が亡くなったときにタンスなどから自筆証書遺言が発見されたときに、相続人がこの遺贈を実行しない可能性が高い。つい先だって経験した話であるが、法律相談に行った弁護士が見せなくていいといったとのことである、倫理の欠片もないのか。

3.事業承継したいときには遺言は不可欠

将来自分の子どもに事業を継がせたい時には、会社ではなく個人で事業を営む場合に、死亡すれば本人名義の預貯金口座が凍結されるため、速やかに相続手続ができなければ従業員や取引先にお金が払えず、事業に支障をきたす。この時に最も早く凍結が解除されるのは、相続おもいやり相談室の当職ではほぼ5日、遅くとも10日あれば充分である。ただし、自筆証書遺言は検認に時間がかかる(改正相続法による場合も保管がある)が、公正証書遺言の製本を相続おもいやり相談室の当職は預かっているので速い。

また、株式会社の場合は、後継者に事業承継するためには、株式の大半を相続させる必要があり、遺言書がない場合、事業に関わらない相続人も株式を保有することになり、経営権の集中が困難になる。後継者に事業承継したいのならば、自社株式、事業用不動産・動産(車両、機械備品など)、特許権などの知的財産権、その他経営に関わる権利を、遺言で集中的に相続させるのが有効である。

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