自筆証書遺言の法務局保管の具体的方法(2020年7月1日より相続法特別法施行)

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1.法務局における遺言書の保管等に関する法律および政令の施行 2020年7月1日より

(1)「法務局における遺言書の保管等に関する法律」(平成三〇年七月一三日/法律第七三号)

第一条(趣旨)
この法律は、法務局(法務局の支局及び出張所、法務局の支局の出張所並びに地方法務局及びその支局並びにこれらの出張所を含む。次条第一項において同じ。)における遺言書(民法(明治二十九年法律第八十九号)第九百六十八条の自筆証書によってした遺言に係る遺言書をいう。以下同じ。)の保管及び情報の管理に関し必要な事項を定めるとともに、その遺言書の取扱いに関し特別の定めをするものとする。

第二条(遺言書保管所)
遺言書の保管に関する事務は、法務大臣の指定する法務局が、遺言書保管所としてつかさどる。
2前項の指定は、告示してしなければならない。

第三条(遺言書保管官)
遺言書保管所における事務は、遺言書保管官(遺言書保管所に勤務する法務事務官のうちから、法務局又は地方法務局の長が指定する者をいう。以下同じ。)が取り扱う。

第四条(遺言書の保管の申請)
遺言者は、遺言書保管官に対し、遺言書の保管の申請をすることができる。
2前項の遺言書は、法務省令で定める様式に従って作成した無封のものでなければならない。
3第一項の申請は、遺言者の住所地若しくは本籍地又は遺言者が所有する不動産の所在地を管轄する遺言書保管所(遺言者の作成した他の遺言書が現に遺言書保管所に保管されている場合にあっては、当該他の遺言書が保管されている遺言書保管所)の遺言書保管官に対してしなければならない。
4第一項の申請をしようとする遺言者は、法務省令で定めるところにより、遺言書に添えて、次に掲げる事項を記載した申請書を遺言書保管官に提出しなければならない。
一 遺言書に記載されている作成の年月日
二 遺言者の氏名、出生の年月日、住所及び本籍(外国人にあっては、国籍)
三 遺言書に次に掲げる者の記載があるときは、その氏名又は名称及び住所
イ 受遺者
ロ 民法第千六条第一項の規定により指定された遺言執行者
四 前三号に掲げるもののほか、法務省令で定める事項
5前項の申請書には、同項第二号に掲げる事項を証明する書類その他法務省令で定める書類を添付しなければならない。
6遺言者が第一項の申請をするときは、遺言書保管所に自ら出頭して行わなければならない。

第五条(遺言書保管官による本人確認)
遺言書保管官は、前条第一項の申請があった場合において、申請人に対し、法務省令で定めるところにより、当該申請人が本人であるかどうかの確認をするため、当該申請人を特定するために必要な氏名その他の法務省令で定める事項を示す書類の提示若しくは提出又はこれらの事項についての説明を求めるものとする。

第六条(遺言書の保管等)
遺言書の保管は、遺言書保管官が遺言書保管所の施設内において行う。
2遺言者は、その申請に係る遺言書が保管されている遺言書保管所(第四項及び第八条において「特定遺言書保管所」という。)の遺言書保管官に対し、いつでも当該遺言書の閲覧を請求することができる。
3前項の請求をしようとする遺言者は、法務省令で定めるところにより、その旨を記載した請求書に法務省令で定める書類を添付して、遺言書保管官に提出しなければならない。
4遺言者が第二項の請求をするときは、特定遺言書保管所に自ら出頭して行わなければならない。この場合においては、前条の規定を準用する。
5遺言書保管官は、第一項の規定による遺言書の保管をする場合において、遺言者の死亡の日(遺言者の生死が明らかでない場合にあっては、これに相当する日として政令で定める日)から相続に関する紛争を防止する必要があると認められる期間として政令で定める期間が経過した後は、これを廃棄することができる。

第七条(遺言書に係る情報の管理)
遺言書保管官は、前条第一項の規定により保管する遺言書について、次項に定めるところにより、当該遺言書に係る情報の管理をしなければならない。
2遺言書に係る情報の管理は、磁気ディスク(これに準ずる方法により一定の事項を確実に記録することができる物を含む。)をもって調製する遺言書保管ファイルに、次に掲げる事項を記録することによって行う。
一 遺言書の画像情報
二 第四条第四項第一号から第三号までに掲げる事項
三 遺言書の保管を開始した年月日
四 遺言書が保管されている遺言書保管所の名称及び保管番号
3前条第五項の規定は、前項の規定による遺言書に係る情報の管理について準用する。この場合において、同条第五項中「廃棄する」とあるのは、「消去する」と読み替えるものとする。

第八条(遺言書の保管の申請の撤回)
遺言者は、特定遺言書保管所の遺言書保管官に対し、いつでも、第四条第一項の申請を撤回することができる。
2前項の撤回をしようとする遺言者は、法務省令で定めるところにより、その旨を記載した撤回書に法務省令で定める書類を添付して、遺言書保管官に提出しなければならない。
3遺言者が第一項の撤回をするときは、特定遺言書保管所に自ら出頭して行わなければならない。この場合においては、第五条の規定を準用する。
4遺言書保管官は、遺言者が第一項の撤回をしたときは、遅滞なく、当該遺言者に第六条第一項の規定により保管している遺言書を返還するとともに、前条第二項の規定により管理している当該遺言書に係る情報を消去しなければならない。

第九条(遺言書情報証明書の交付等)
次に掲げる者(以下この条において「関係相続人等」という。)は、遺言書保管官に対し、遺言書保管所に保管されている遺言書(その遺言者が死亡している場合に限る。)について、遺言書保管ファイルに記録されている事項を証明した書面(第五項及び第十二条第一項第三号において「遺言書情報証明書」という。)の交付を請求することができる。
一 当該遺言書の保管を申請した遺言者の相続人(民法第八百九十一条の規定に該当し又は廃除によってその相続権を失った者及び相続の放棄をした者を含む。以下この条において同じ。)
二 前号に掲げる者のほか、当該遺言書に記載された次に掲げる者又はその相続人(ロに規定する母の相続人の場合にあっては、ロに規定する胎内に在る子に限る。)
イ 第四条第四項第三号イに掲げる者
ロ 民法第七百八十一条第二項の規定により認知するものとされた子(胎内に在る子にあっては、その母)
ハ 民法第八百九十三条の規定により廃除する意思を表示された推定相続人(同法第八百九十二条に規定する推定相続人をいう。以下このハにおいて同じ。)又は同法第八百九十四条第二項において準用する同法第八百九十三条の規定により廃除を取り消す意思を表示された推定相続人
ニ 民法第八百九十七条第一項ただし書の規定により指定された祖先の祭祀しを主宰すべき者
ホ 国家公務員災害補償法(昭和二十六年法律第百九十一号)第十七条の五第三項の規定により遺族補償一時金を受けることができる遺族のうち特に指定された者又は地方公務員災害補償法(昭和四十二年法律第百二十一号)第三十七条第三項の規定により遺族補償一時金を受けることができる遺族のうち特に指定された者
ヘ 信託法(平成十八年法律第百八号)第三条第二号に掲げる方法によって信託がされた場合においてその受益者となるべき者として指定された者若しくは残余財産の帰属すべき者となるべき者として指定された者又は同法第八十九条第二項の規定による受益者指定権等の行使により受益者となるべき者
ト 保険法(平成二十年法律第五十六号)第四十四条第一項又は第七十三条第一項の規定による保険金受取人の変更により保険金受取人となるべき者
チ イからトまでに掲げる者のほか、これらに類するものとして政令で定める者
三 前二号に掲げる者のほか、当該遺言書に記載された次に掲げる者
イ 第四条第四項第三号ロに掲げる者
ロ 民法第八百三十条第一項の財産について指定された管理者
ハ 民法第八百三十九条第一項の規定により指定された未成年後見人又は同法第八百四十八条の規定により指定された未成年後見監督人
ニ 民法第九百二条第一項の規定により共同相続人の相続分を定めることを委託された第三者、同法第九百八条の規定により遺産の分割の方法を定めることを委託された第三者又は同法第千六条第一項の規定により遺言執行者の指定を委託された第三者
ホ 著作権法(昭和四十五年法律第四十八号)第七十五条第二項の規定により同条第一項の登録について指定を受けた者又は同法第百十六条第三項の規定により同条第一項の請求について指定を受けた者
ヘ 信託法第三条第二号に掲げる方法によって信託がされた場合においてその受託者となるべき者、信託管理人となるべき者、信託監督人となるべき者又は受益者代理人となるべき者として指定された者
ト イからヘまでに掲げる者のほか、これらに類するものとして政令で定める者
2前項の請求は、自己が関係相続人等に該当する遺言書(以下この条及び次条第一項において「関係遺言書」という。)を現に保管する遺言書保管所以外の遺言書保管所の遺言書保管官に対してもすることができる。
3関係相続人等は、関係遺言書を保管する遺言書保管所の遺言書保管官に対し、当該関係遺言書の閲覧を請求することができる。
4第一項又は前項の請求をしようとする者は、法務省令で定めるところにより、その旨を記載した請求書に法務省令で定める書類を添付して、遺言書保管官に提出しなければならない。
5遺言書保管官は、第一項の請求により遺言書情報証明書を交付し又は第三項の請求により関係遺言書の閲覧をさせたときは、法務省令で定めるところにより、速やかに、当該関係遺言書を保管している旨を遺言者の相続人並びに当該関係遺言書に係る第四条第四項第三号イ及びロに掲げる者に通知するものとする。ただし、それらの者が既にこれを知っているときは、この限りでない。

第一〇条(遺言書保管事実証明書の交付)
何人も、遺言書保管官に対し、遺言書保管所における関係遺言書の保管の有無並びに当該関係遺言書が保管されている場合には遺言書保管ファイルに記録されている第七条第二項第二号(第四条第四項第一号に係る部分に限る。)及び第四号に掲げる事項を証明した書面(第十二条第一項第三号において「遺言書保管事実証明書」という。)の交付を請求することができる。
2前条第二項及び第四項の規定は、前項の請求について準用する。

第一一条(遺言書の検認の適用除外)
民法第千四条第一項の規定は、遺言書保管所に保管されている遺言書については、適用しない。

第一二条(手数料)
次の各号に掲げる者は、物価の状況のほか、当該各号に定める事務に要する実費を考慮して政令で定める額の手数料を納めなければならない。
一 遺言書の保管の申請をする者 遺言書の保管及び遺言書に係る情報の管理に関する事務
二 遺言書の閲覧を請求する者 遺言書の閲覧及びそのための体制の整備に関する事務
三 遺言書情報証明書又は遺言書保管事実証明書の交付を請求する者 遺言書情報証明書又は遺言書保管事実証明書の交付及びそのための体制の整備に関する事務
2前項の手数料の納付は、収入印紙をもってしなければならない。

第一三条(行政手続法の適用除外)
遺言書保管官の処分については、行政手続法(平成五年法律第八十八号)第二章の規定は、適用しない。

第一四条(行政機関の保有する情報の公開に関する法律の適用除外)
遺言書保管所に保管されている遺言書及び遺言書保管ファイルについては、行政機関の保有する情報の公開に関する法律(平成十一年法律第四十二号)の規定は、適用しない。

第一五条(行政機関の保有する個人情報の保護に関する法律の適用除外)
遺言書保管所に保管されている遺言書及び遺言書保管ファイルに記録されている保有個人情報(行政機関の保有する個人情報の保護に関する法律(平成十五年法律第五十八号)第二条第五項に規定する保有個人情報をいう。)については、同法第四章の規定は、適用しない。

第一六条(審査請求)
遺言書保管官の処分に不服がある者又は遺言書保管官の不作為に係る処分を申請した者は、監督法務局又は地方法務局の長に審査請求をすることができる。
2審査請求をするには、遺言書保管官に審査請求書を提出しなければならない。
3遺言書保管官は、処分についての審査請求を理由があると認め、又は審査請求に係る不作為に係る処分をすべきものと認めるときは、相当の処分をしなければならない。
4遺言書保管官は、前項に規定する場合を除き、三日以内に、意見を付して事件を監督法務局又は地方法務局の長に送付しなければならない。この場合において、監督法務局又は地方法務局の長は、当該意見を行政不服審査法(平成二十六年法律第六十八号)第十一条第二項に規定する審理員に送付するものとする。
5法務局又は地方法務局の長は、処分についての審査請求を理由があると認め、又は審査請求に係る不作為に係る処分をすべきものと認めるときは、遺言書保管官に相当の処分を命じ、その旨を審査請求人のほか利害関係人に通知しなければならない。
6法務局又は地方法務局の長は、審査請求に係る不作為に係る処分についての申請を却下すべきものと認めるときは、遺言書保管官に当該申請を却下する処分を命じなければならない。
7第一項の審査請求に関する行政不服審査法の規定の適用については、同法第二十九条第五項中「処分庁等」とあるのは「審査庁」と、「弁明書の提出」とあるのは「法務局における遺言書の保管等に関する法律(平成三十年法律第七十三号)第十六条第四項に規定する意見の送付」と、同法第三十条第一項中「弁明書」とあるのは「法務局における遺言書の保管等に関する法律第十六条第四項の意見」とする。

第一七条(行政不服審査法の適用除外)
行政不服審査法第十三条、第十五条第六項、第十八条、第二十一条、第二十五条第二項から第七項まで、第二十九条第一項から第四項まで、第三十一条、第三十七条、第四十五条第三項、第四十六条、第四十七条、第四十九条第三項(審査請求に係る不作為が違法又は不当である旨の宣言に係る部分を除く。)から第五項まで及び第五十二条の規定は、前条第一項の審査請求については、適用しない。

第一八条(政令への委任)
この法律に定めるもののほか、遺言書保管所における遺言書の保管及び情報の管理に関し必要な事項は、政令で定める。

附則
この法律は、公布の日から起算して二年を超えない範囲内において政令で定める日から施行する。

(2)「法務局における遺言書の保管等に関する政令」令和元年政令第百七十八号

内閣は、法務局における遺言書の保管等に関する法律(平成三十年法律第七十三号)第六条第五項(同法第七条第三項において準用する場合を含む。)、第九条第一項第二号チ及び第三号ト並びに第十八条の規定に基づき、この政令を制定する。
(趣旨)
第一条 この政令は、法務局における遺言書の保管等に関する法律(以下「法」という。)の規定による遺言書の保管及び情報の管理に関し必要な事項を定めるものとする。

(遺言書の保管の申請の却下)
第二条 遺言書保管官は、次の各号のいずれかに該当する場合には、理由を付した決定で、法第四条第一項の申請を却下しなければならない。
一 当該申請が遺言者以外の者によるものであるとき、又は申請人が遺言者であることの証明がないとき。
二 当該申請に係る遺言書が、法第一条に規定する遺言書でないとき、又は法第四条第二項に規定する様式に従って作成した無封のものでないとき。
三 当該申請が法第四条第三項に規定する遺言書保管官に対してされたものでないとき。
四 申請書が法第四条第四項に定めるところにより提出されなかったとき。
五 申請書に法第四条第五項に規定する書類を添付しないとき。
六 法第四条第六項の規定に違反して、遺言者が出頭しないとき。
七 申請書又はその添付書類の記載が当該申請書の添付書類又は当該申請に係る遺言書の記載と抵触するとき。
八 法第十二条第一項の手数料を納付しないとき。

(遺言者の住所等の変更の届出)
第三条 遺言者は、法第四条第一項の申請に係る遺言書が遺言書保管所に保管されている場合において、同条第四項第二号又は第三号に掲げる事項に変更が生じたときは、速やかに、その旨を遺言書保管官に届け出なければならない。
2 前項の規定による届出は、同項の遺言書が保管されている遺言書保管所(次条第二項において「特定遺言書保管所」という。)以外の遺言書保管所の遺言書保管官に対してもすることができる。
3 第一項の規定による届出をしようとする遺言者は、法務省令で定めるところにより、変更が生じた事項を記載した届出書に法務省令で定める書類を添付して、遺言書保管官に提出しなければならない。

(遺言者による遺言書保管ファイルの記録の閲覧)
第四条 遺言者は、遺言書保管官に対し、いつでも、法第四条第一項の申請に係る遺言書に係る遺言書保管ファイルに記録された事項を法務省令で定める方法により表示したものの閲覧の請求をすることができる。
2 前項の請求は、特定遺言書保管所以外の遺言書保管所の遺言書保管官に対してもすることができる。
3 第一項の請求をしようとする遺言者は、法務省令で定めるところにより、その旨を記載した請求書に法務省令で定める書類を添付して、遺言書保管官に提出しなければならない。
4 遺言者が第一項の請求をするときは、遺言書保管所に自ら出頭して行わなければならない。この場合においては、法第五条の規定を準用する。
5 法第十二条第一項(第二号に係る部分に限る。)及び第二項の規定は、第一項の閲覧を請求する者について準用する。

(遺言書の保管期間等)
第五条 法第六条第五項(法第七条第三項において準用する場合を含む。)の政令で定める日は、遺言者の出生の日から起算して百二十年を経過した日とする。
2 法第六条第五項の政令で定める期間は五十年とし、法第七条第三項において準用する法第六条第五項の政令で定める期間は百五十年とする。

(遺言書情報証明書の送付請求等)
第六条 遺言書情報証明書又は遺言書保管事実証明書の交付を請求する場合において、その送付を求めるときは、情報通信技術を活用した行政の推進等に関する法律(平成十四年法律第百五十一号)第六条第一項の規定により同項に規定する電子情報処理組織を使用する方法により行う場合を除き、法務省令で定めるところにより、当該送付に要する費用を納付しなければならない。

(法第九条第一項第二号チの政令で定める者)
第七条 法第九条第一項第二号チの政令で定める者は、次に掲げる者とする。
一 国家公務員災害補償法(昭和二十六年法律第百九十一号)以外の法令において引用し、準用し、又はその例によることとされる同法第十七条の五第三項の規定により遺族補償一時金を受けることができる遺族のうち特に指定された者
二 災害救助法施行令(昭和二十二年政令第二百二十五号)第十三条第三項の規定により遺族扶助金を受けることができる遺族のうち特に指定された者
三 警察官の職務に協力援助した者の災害給付に関する法律施行令(昭和二十七年政令第四百二十九号)第十条の五第三項の規定により遺族給付一時金を受けることができる遺族のうち特に指定された者
四 海上保安官に協力援助した者等の災害給付に関する法律施行令(昭和二十八年政令第六十二号)第十一条第三項の規定により遺族給付一時金を受けることができる遺族のうち特に指定された者
五 非常勤消防団員等に係る損害補償の基準を定める政令(昭和三十一年政令第三百三十五号)第九条第三項の規定により遺族補償一時金を受けることができる遺族のうち特に指定された者
六 公立学校の学校医、学校歯科医及び学校薬剤師の公務災害補償の基準を定める政令(昭和三十二年政令第二百八十三号)第十三条第三項の規定により遺族補償一時金を受けることができる遺族のうち特に指定された者
七 証人等の被害についての給付に関する法律施行令(昭和三十三年政令第二百二十七号)第十二条第三項の規定により遺族給付一時金を受けることができる遺族のうち特に指定された者
八 前各号に掲げる者のほか、これらに類するものとして法務省令で定める者

(法第九条第一項第三号トの政令で定める者)
第八条 法第九条第一項第三号トの政令で定める者は、次に掲げる者とする。
一 著作権法(昭和四十五年法律第四十八号)第百十六条第二項ただし書の規定により同条第一項の請求についてその順位を別に定められた者
二 前号に掲げる者のほか、これに類するものとして法務省令で定める者

(関係相続人等による遺言書保管ファイルの記録の閲覧)
第九条 関係相続人等(法第九条第一項に規定する関係相続人等をいう。次条第三項第二号において同じ。)は、遺言書保管官に対し、遺言書保管所に保管されている関係遺言書(法第九条第二項に規定する関係遺言書をいい、その遺言者が死亡している場合に限る。以下この条において同じ。)について、遺言書保管ファイルに記録された事項を法務省令で定める方法により表示したものの閲覧の請求をすることができる。
2 前項の請求は、当該関係遺言書を現に保管する遺言書保管所以外の遺言書保管所の遺言書保管官に対してもすることができる。
3 第一項の請求をしようとする者は、法務省令で定めるところにより、その旨を記載した請求書に法務省令で定める書類を添付して、遺言書保管官に提出しなければならない。
4 遺言書保管官は、第一項の請求により遺言書保管ファイルに記録された事項を表示したものの閲覧をさせたときは、法務省令で定めるところにより、速やかに、当該関係遺言書を保管している旨を遺言者の相続人(民法(明治二十九年法律第八十九号)第八百九十一条の規定に該当し又は廃除によってその相続権を失った者及び相続の放棄をした者を含む。次条において同じ。)並びに当該関係遺言書に係る法第四条第四項第三号イ及びロに掲げる者に通知するものとする。ただし、それらの者が既にこれを知っているときは、この限りでない。
5 法第十二条第一項(第二号に係る部分に限る。)及び第二項の規定は、第一項の閲覧を請求する者について準用する。

(申請書等の閲覧)
第十条 遺言者は、次に掲げる申請又は届出(以下「申請等」と総称する。)をした場合において、特別の事由があるときは、当該申請等をした遺言書保管所の遺言書保管官に対し、当該申請等に係る申請書若しくは届出書又はその添付書類(以下「申請書等」と総称する。)の閲覧の請求をすることができる。
一 法第四条第一項の申請
二 第三条第一項の規定による届出
2 遺言者は、法第八条第一項の撤回をした場合において、特別の事由があるときは、当該撤回がされた遺言書保管所の遺言書保管官に対し、同条第二項の撤回書又はその添付書類(以下「撤回書等」と総称する。)の閲覧の請求をすることができる。
3 次に掲げる者は、申請等をした遺言者が死亡している場合において、特別の事由があるときは、当該申請等がされた遺言書保管所の遺言書保管官に対し、当該申請等に係る申請書等の閲覧の請求をすることができる。
一 当該遺言者の相続人
二 関係相続人等(前号に掲げる者を除く。)
三 当該申請等に係る申請書又は届出書に記載されている法第四条第四項第三号イ又はロに掲げる者(前二号に掲げる者を除く。)
4 次に掲げる者は、法第八条第一項の撤回をした遺言者が死亡している場合において、特別の事由があるときは、当該撤回がされた遺言書保管所の遺言書保管官に対し、当該撤回に係る撤回書等の閲覧の請求をすることができる。
一 当該遺言者の相続人
二 当該撤回がされた申請に係る遺言書に記載されていた法第四条第四項第三号イ又はロに掲げる者(前号に掲げる者を除く。)
5 前各項の請求をしようとする者は、法務省令で定めるところにより、その旨を記載した請求書に法務省令で定める書類を添付して、遺言書保管官に提出しなければならない。
6 遺言者が第一項又は第二項の請求をするときは、遺言書保管所に自ら出頭して行わなければならない。この場合においては、法第五条の規定を準用する。
7 法第十二条第一項(第二号に係る部分に限る。)及び第二項の規定は、第一項から第四項までの閲覧を請求する者について準用する。

(行政機関の保有する情報の公開に関する法律の適用除外)
第十一条 申請書等及び撤回書等については、行政機関の保有する情報の公開に関する法律(平成十一年法律第四十二号)の規定は、適用しない。

(行政機関の保有する個人情報の保護に関する法律の適用除外)
第十二条 申請書等及び撤回書等に記録されている保有個人情報(行政機関の保有する個人情報の保護に関する法律(平成十五年法律第五十八号)第二条第五項に規定する保有個人情報をいう。)については、同法第四章の規定は、適用しない。

(事件の送付)
第十三条 法第十六条第四項の規定による事件の送付は、審査請求書の正本によってする。

(意見書の提出等)
第十四条 法第十六条第四項の意見を記載した書面(次項において「意見書」という。)は、正本及び当該意見を送付すべき審査請求人の数に行政不服審査法(平成二十六年法律第六十八号)第十一条第二項に規定する審理員の数を加えた数に相当する通数の副本を提出しなければならない。
2 法第十六条第四項後段の規定による意見の送付は、意見書の副本によってする。

(行政不服審査法施行令の規定の読替え)
第十五条 法第十六条第一項の審査請求に関する行政不服審査法施行令(平成二十七年政令第三百九十一号)の規定の適用については、同令第六条第三項中「法第二十九条第五項」とあるのは「法務局における遺言書の保管等に関する法律(平成三十年法律第七十三号)第十六条第七項の規定により読み替えて適用する法第二十九条第五項」と、「弁明書の送付」とあるのは「法務局における遺言書の保管等に関する法律第十六条第四項の意見の送付」と、「弁明書の副本」とあるのは「法務局における遺言書の保管等に関する政令(令和元年政令第百七十八号)第十四条第一項に規定する意見書の副本」とする。

(法務省令への委任)
第十六条 この政令の実施のため必要な事項は、法務省令で定める。
附 則
この政令は、法の施行の日(令和二年七月十日)から施行する。

2.相続法改正に伴う特別法制定による自筆証書遺言に係る遺言書の保管制度の開始

(1)遺言書の保管の申請

保管の申請の対象となるのは,民法第968条の自筆証書によってした遺言(自筆証書遺言)に係る遺言書のみで(法第1条)、遺言書は,封のされていない法務省令で定める様式(別途定められる)に従って作成されたものでなければならない(法第4条第2項)。

民法第968条の自筆証書によってした遺言に係る遺言書でない場合とは、外形的に見て有効な自筆証書遺言でないことが一義的に明白である遺言書を意味するものである。そのような遺言書としては、作成日付や氏名の記載がない遺言書、本文が手書きでない遺言書、遺言書の作成時に遺言者の年齢が15歳に達していない遺言書等が挙げられる。
遺言書の保管に関する事務は,法務局のうち法務大臣の指定する法務局(遺言書保管所)において,遺言書保管官として指定された法務事務官が取り扱う(法第2条,法第3条)。
遺言書の保管の申請は,遺言者の住所地若しくは本籍地又は遺言者が所有する不動産の所在地を管轄する遺言書保管所の遺言書保管官に対してすることができる(法第4条第3項)。
遺言書の保管の申請は,代理申請が一切できず、遺言者が遺言書保管所に自ら出頭して行う。その際,遺言書保管官は,申請人が本人であるかどうかの確認をする(法第4条第6項,法第5条)。

遺言書の保管の申請の却下:遺言書保管官は,遺言書の保管の申請が遺言者以外の者によるものである場合等には,理由を付した決定で,当該申請を却下する(令第2条)。例えば、遺言者から遺言書を預かっている者が自己を申請名義人として法第4条第1項の申請を行った場合には、当該申請は却下されることとなる。又は、申請名義人として遺言者の氏名が記載されている場合において、遺言者から委任を受けた者が代理人として遺言書保管所に出頭して、申請を行ったときは、当該申請は却下されることとなる。

遺言者の住所等の変更の届出:遺言者は,保管の申請をした遺言書が遺言書保管所に保管されている場合において,遺言者の住所等に変更が生じたときは,速やかに,その旨を遺言書保管官に届出をする(令第3条)。

(2)遺言書保管官による遺言書の保管及び情報の管理

保管の申請がされた遺言書については,遺言書保管官が,遺言書保管所の施設内において原本を保管するとともに,その画像情報等の遺言書に係る情報を管理する(法第6条第1項,法第7条第1項)。

(3)遺言者による遺言書の閲覧,保管の申請の撤回

遺言者は,保管されている遺言書について,その閲覧を請求することができ,また,遺言書の保管の申請を撤回することができる(法第6条,法第8条)。保管の申請が撤回されると,遺言書保管官は,遺言者に遺言書を返還するとともに遺言書に係る情報を消去する(法第8条第4項)。
遺言者の生存中は,遺言者以外の方は,遺言書の閲覧等を行うことはできない。

遺言者による遺言書保管ファイルの記録の閲覧:遺言者は,遺言書保管官に対し,いつでも,保管の申請をした遺言書に係る遺言書保管ファイルに記録された事項を法務省令で定める方法により表示したものの閲覧の請求をし得る(令第4条)。

遺言書の保管期間:遺言書保管法第6条第5項(法第7条第3項において準用する場合を含む。)の遺言者の生死が明らかでない場合における遺言者の死亡の日に相当する日として政令で定める日は,遺言者の出生の日から起算して120年を経過した日(令第5条第1項)。
遺言書保管法第6条第5項(法第7条第3項において準用する場合を含む。 )の相続に関する紛争を防止する必要があると認められる期間として政令で定める期間は,遺言書については50年,遺言書に係る情報については150年(令第5条第2項)。

(4)遺言書の保管の有無の照会及び相続人等による証明書の請求等

特定の死亡している者について,自己(請求者)が相続人,受遺者等となっている遺言書(関係遺言書)が遺言書保管所に保管されているかどうかを証明した書面(遺言書保管事実証明書)の交付を請求することができる(法第10条)。
遺言者の相続人,受遺者等は,遺言者の死亡後,遺言書の画像情報等を用いた証明書(遺言書情報証明書)の交付請求及び遺言書原本の閲覧請求が可能である(法第9条)。
遺言書保管官は,遺言書情報証明書を交付し又は相続人等に遺言書の閲覧をさせたときは,速やかに,当該遺言書を保管している旨を遺言者の相続人,受遺者及び遺言執行者に通知する(法第9条第5項)。

遺言書情報証明書の送付請求:遺言書情報証明書又は遺言書保管事実証明書の交付請求については、郵送による送付を求めることも可能であるので、遺言書情報証明書又は遺言書保管事実証明書の交付を請求する場合において,その送付を求めるときは,当該送付に要する費用を納付する必要がある(第6条)。

遺言書の保管申請書等の閲覧:遺言者は,特別の事由があるときは,遺言書保管官に対し,遺言書の保管の申請に係る申請書又はその添付書類等の閲覧の請求をすることができる(第10条第1項,第2項)。特別の事由としては、偽造された添付書類等が用いられるなどの不正な手段によって申請等又は撤回がされたおそれがある場合等が挙げられる。
遺言者の相続人等は,当該遺言者が死亡している場合において,特別の事由があるときは,遺言書保管官に対し,遺言書の保管の申請に係る申請書又はその添付書類等の閲覧の請求をすることができる(第10条第3項,第4項)。

(5)遺言書の検認の適用除外

遺言書保管所に保管されている遺言書については, 遺言書の検認(民法第1004条第1項)の規定は,適用されない(法第11条)。

(6)手数料

遺言書の保管の申請,遺言書の閲覧請求,遺言書情報証明書又は遺言書保管事実証明書の交付の請求をするには,後記の手数料を納める必要がある(法第12条)。

3.法務局において自筆証書遺言に係る遺言書を保管する制度の具体的事項(手数料)

遺言書保管政令は、法の委任に基づき制定されたものであるが、同政令の規定には、法の個別の委任規定に基づくものと、包括的な委任規定に基づくものがあり、前者は第5条(遺言書保管官による本人確認)等である。

なお、手数料については、法第12条第1項の規定に基づき、下記のように別の政令で定められた。遺言書の撤回及び変更の届出については手数料はかからない。

※法務省の関連サイト(最も詳しい)⇒ http://www.moj.go.jp/MINJI/minji03_00051.html

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